第11話 アストラ・カーネル制御核へ

 浮遊都市の心臓部――中枢制御室は、無数の浮遊プレートと回転する歯車の迷宮だった。空間がねじれ、空に浮かぶ床が上下左右に移動している。


 「アイナ、魔法で座標を安定させられるか?」


 「展開中……っと、これで“相対重力”を固定できたはず」


 アイナが魔導端末を操作すると、リビルドの足元が空間に固定され、ぶれる視界が収束する。


 中央に鎮座する巨大な装置――《アストラ・カーネル》。かつてギア=テクト文明が“空”を制御するために作り出した浮遊炉。その外殻は赤黒く脈動し、魔素が漏れ出している。


 「オーバーロード状態……あと10分で臨界ね。最悪、都市ごと吹っ飛ぶ」


 「つまり、止めるしかないってコト……だな」


 ナオヤは一歩、炉へと近づく。だがその時、低く響く警告音と共に、上部のアームが動き出す。


 《アクセス制限:侵入者排除モード起動》


 ガシャリ、と音を立てて現れたのは――二体の巨大な人型兵器。ギア=テクト製の防衛自動機、《守護機構ヴェルクス》。


 「うわ、出たよガーディアン系!」


 「ナオヤ、時間との勝負よ!」


 「おうとも、相手は古代兵器だ――なら、クラフト魂で勝つまでよ!」


 ナオヤはリビルドで即座に《黒鋼》を展開。ヴェルクスの巨大なブレードが振り下ろされる寸前、ギリギリで受け止める。


 「くぅぅっ、重い……けど、予想通りだ!」


 ナオヤはスラスターで側面に回り込み、カウンターを叩き込む。黒鋼は何の抵抗もなくヴェルクスを切り裂く。


 「今宵の、黒鋼は血に飢えておるぅ!!」


 「もう一体も!よっと!」


 「……ふざけながら、防御特化の機体をあっさりと……」


 その時、バチィッ、と空間が歪み、再び転移陣が展開された。


 「またかよ……!」


 現れたのは、重傷を負い、黒紅の外套を纏ったルビナだった。


 「……私はまだ、任務の途中……」


 「ルビナ……なんで、また来るんだよ!」


 「“お前たち”に《アストラ・カーネル》を掌握させない、それがギルドからの命令。絶対に、達成する」


 ルビナの背後に浮かぶ《レッド・コード》が再構成される。今度は完全な術式制御体。彼女自身が制御炉とリンクしている。


 「お前、まさか……《ゼルスの瞳》そのものと接続を……!?」


 「私がこの空を“代行”する。ギルドの意志として」


 そして、ルビナの姿が変わる。肌は光素に包まれ、背に《魔装展開翼》が広がる。


 《ルビナ・インテグラルモード:起動》


 それは、人機融合状態――最終段階の殲滅執行者。


 「ひどい……ナオヤ、あの状態は……もう“人間”の魔力量じゃない。直接炉から魔力供給を受けてる!」


 「つまり、《アストラ・カーネル》を止めたら、アイツも――!」


 「行くわよ……止めれる物なら止めてみせなさい、ナオヤ……!」


 ルビナの言葉に、刹那の躊躇が生まれた。


 だがナオヤは、唇を噛んで叫んだ。


 「ふざけんな! お前も、こんな使われ方していいはずがねぇだろ!」


 「私は……ギルドの剣。命令こそが、私の“存在理由”」


 「違うッ! お前がまだ人としてここにいるなら――! 叩き起こす!」


 リビルドが最大加速。重力炉の暴走熱が空間を焼く中、リビルドvsルビナの最後の一騎打ちが始まる。

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