転生薬師は癒しを掲げて、かつて私を焼いた世界を救う-焼かれた元魔女、処刑された恨みは薬で返します-

明鏡止水

プロローグ

焼かれるような痛みが、夢の奥底から蘇る。


皮膚が、骨が、心が――崩れていく音。

炎に包まれながら、私はただひとつの問いを抱いていた。


(どうして……私は、癒しただけなのに)


命の最期に聞こえたのは、誰かの「ありがとう」。

あれだけ救ったのに、私の最期は「魔女の火刑」。

神の名のもと、理不尽に葬られた命。

そうして私は、一度、死んだ。


 


でも、目覚めてしまった。

淡い緑と光が揺れる、見知らぬ森の中で。


「ここ……は……?」


傷ひとつない身体。

けれど心には、確かにあの記憶が焼きついている。


「私は……誰……?」


答えはどこにもなかった。


だがそのとき、頭の奥から溢れてきたのは薬草の知識、魔術の感覚、そして――燃やされたはずの“私”自身だった。


 


通りがかりの旅商人が、名もなく倒れていた私にこう言った。


「名前は?――覚えてないのか。それなら……仮に“アニマ”って名でどうだ?」


その名は魂を意味するという。

ならば、いいだろう。魂だけはまだ、失っていない。


 


私はアニマ。

かつて魔女と呼ばれ、火に焼かれた者。

今度こそ、癒す力で、この世界を救ってみせる。

自分自身さえ、救えるように。


それが、私の――新たな旅の始まりだった。



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