社畜女、異世界で推しの傭兵おじさんと出会う
- ★★★ Excellent!!!
<第1話「社畜女、異世界に立つ!」を読んでのレビューです>
物語は社畜の主人公・恵麻が、深夜まで残業をこなしながら乙女ゲームの推しキャラに思いを馳せる日常から始まる。細かい心理描写や現実の労働環境と趣味嗜好の対比が丁寧に描かれ、読者は彼女の世界に自然と入り込むことができる。日常的なリアル感から突然異世界に召喚される場面への切り替えも滑らかで、ギャップが笑いと緊張を同時に誘う。文章は軽妙でありながら、読者が恵麻の内面に共感しやすいテンポで進む。
個人的に印象的だったのは、「少しボサボサな焦茶色の襟足のある髪型、顎にある少しの無精髭、顔全体にかかる大きな傷、190センチのガタイのいい身体……まるで最愛の推しが、立体化したかのような男性がそこにいた」という描写だ。理由は、これまで画面越しやグッズでしか接してこなかった推しキャラが現実に立ち現れる瞬間を、視覚・触覚・感情の細部にまで言及して描いており、読者もその驚きと胸の高鳴りを同時に体感できる点にある。
全体として、日常の丁寧な描写と異世界転移の非日常感、そしてキャラクターへの愛情表現が見事に両立しており、主人公の情熱や行動の理由が自然に伝わってくる。この作品を通して、キャラクターに寄り添う作者の目線の温かさや、読者を楽しませる構成力に魅了される。