同窓会

麻衣ちゃんの成人式の時に買った振り袖は、緑に色んな柄の入った普通なやつ。

花とか葉っぱとか鞠とかなんか模様とか。


子供の頃から行っている美容室のおばさんは、よそんちの子のただのお客な私なのに、凄く嬉しそうに「スズちゃんがもう成人か~」って何度も言った。



セットのしようがない私のヘアースタイルは、右サイドだけくるくるっと留めて、赤い花の飾りを付けてくれた。


インナーカラーが綺麗に見えるように。






「あ!スズだ!」


会場に着くと、すぐにキノコが見つけてくれた。


「じゃあねすずちゃん」

「うん!ありがと~」

麻衣ちゃんの運転で、お母さんと麻衣ちゃんが送ってくれた。


「キノコ~!」

「めちゃかわ!」

「キノコ美人!白くなったね!」

「よく言われる!」アハハ


ここはかつて、お仕事体験で甲田ホールディングスにときめいた体育館。

振り袖を着た人と、スーツの人が沢山。


「とりあえず撮ろう」

「撮ろう撮ろう!」


撮った写真を送りたいのはやまやま。

10時前か。

さすがにまだ起きてるよね。

いや、でも疲れてうとうとしてるかもしれない。


「スズどした?」

「ううん、なんでもない!」


「あっこたち中に入ってるって」

「んじゃ入っとこうか~」


成人式ってまぁその名は知ってるけど、実際何をするのか知らなかった。


中に入ると、係の人に座れ座れ言われて座ったら、杏奈や他の子達と合流することもできず…

「ヤバい…眠い…」

「成人式って全校集会なの…?」zzz

キノコと2人、偉い人が喋るのをずっと聞いてた。



それが終わり外に出ると


大人になることを許され、解放されたような気分だった。



「今これ大人になったんかな?」

「なったんでしょ」



疲れた。



「おいスズ!」


え?


「あ、英介」

「あっち、馬由中集まってるぞ」

「どうどう?」


袖を広げてクルッと回ってみると、英介はプッて吹き出した。


「よぉ似合っておる」

「英介もスーツかっこいいよ!」


「ば…!」


「写真撮ろうよ」

「おう、朝霧に送りつけてやろうぜ!

 はい撮って撮って!」

「や、それは…むこう夜だから寝てるかも」

「え、お前そんなこと気にしてんの?」

「気にするでしょ」


「俺だったらそんなの嫌だけど

 気にせずにラインしてほしいけどな」


でも疲れさせたくない


「ったく…貸せ」


英介は私のスマホを操作する。

「昨日杏奈ちゃんにロックかけろって言われたろ」

「ちょっと、なにやってんの」

私が取り返せないように、体の向きを変えブロックしてくる。


「ほら」


帰ってきたスマホの画面はライン。

昨日の夜、寝る前に送ったおやすみの返信『明日楽しんで来いよ』のメッセージのあとに



『時差が気になって鬼ラインし難いらしい。

 スズのラインは音消しにして

 そんでよく眠ってくれ。えーすけ』



「英介…」

「既読にならないなら寝てるか忙しいか」

「うん…」

「スズも音消しとけ

 きっと朝霧も同じだと思うぞ」

「うん…!」



「あいつはスズの鬼ラインがぜってぇ好きだって」



やっぱ英介は


私の最高の



男友達!



「英介大好き!」




「俺もどこか遠くに行こうかな…」シクシク






英介と自撮りした写真と、英介が撮った私を光輝に送ったらすぐに既読が付き、クマが怒ったスタンプが返ってきた。


『くっつきすぎでは?』


『音消したから中継してください』汗汗


『起きたら見ます』



『気をつかってくれてありがとう』




心が晴れた。


思う存分ラインが出来る。



英介、心の友よ



本当に大好きだよ。






「あ、いたいた~」


「杏奈~」

「わ、キノコ久々じゃーん!」

「みんなどこいたの~」


キノコとあちこちで同窓会しながらうろついていたら、やっと仲間達に会えた。


「スズ東京どうなの~」

「いいな~みんな福岡じゃん」

「私佐賀だけど!」

「そうだったね!ソフトどう?」

久々に会えた高三のクラス。

今日の夜も高三のクラスでクラス会なんだけど、一生に一度の振り袖。

大集合して写真を撮ったりした。


これを気兼ねせずに送れる。


「朝霧さん?」

「うん」


『クラスのみんなに会えたよ!』送信



「杏奈」

「ん?」

「一緒に撮ろう」

「もち~」


「巧実さんが写真送ってって言ってたの」


「そっか」



巧実さんは相変わらずすぐに返信が来る。


『可愛い!』


画面の向こうで笑ってるのが想像できた。




「じゃあ一旦解散して夜ね~!」


幹事をしてくれた野田さんがそう言って、私は杏奈と一度帰ることにした。

着物は可愛くて嬉しくてシャキッとなってすごくいいけど


「早く脱ぎたい」


それ一択。


「私だいぶトイレ我慢してる」

「帯取ったらお腹空いてる自信ある」

「それ!」


まだまだ盛り上がってる会場を脱出する私と杏奈。


「タケルくんはいいの?」

「朝から写真も撮ったし、今日は別行動なの

 やっぱ同窓会の方が大事じゃん」

「そっか」


体育館の広場から道に出るとこまで来ると



「あ」



杏奈が立ち止まる。



「どした?」



その視線の先





「愛理…」





「話す?」


「ちょっと待ってて」




愛理はやっぱり可愛い。

黒で大人っぽい着物がよく似合ってる。


お化粧も

お人形さんみたい



「愛理」

「スズ…」



「愛理、あの時ありがとう!」



「え?」



「えっとね、あれから色々あって

 光輝と結婚することにしたんだ~」



「うそ…」



「愛理があの時

 本当のこと教えてくれてよかった!

 あれでなんていうか…心乱れちゃったし!」エヘッ

「余計なことした?」

「ううん!ちゃんと考えるきっかけになったよ」

「そ」


「愛理に会えたらお礼言いたかったんだ」


「ごめんね」


「ごめんねはもういいよ~」

「うん」



「東京に来たら、ランチでもしようね」



仲直り完了




「行こう杏奈」

「いいの?酷いことされたのに」

「いいの」


いつまでも思い出してもやもやしたくない。


「愛理とまたピアノ弾きたいな」


「あんたも救いようのないいい人だわ…」


「え、ほんと?いい人?」

「ライン聞かなくてよかったの?ランチするなら」



「きっと会う」




私と愛理には



ピアノがあるから。

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