この世界はヒールしか無いの?ハイヒールは!
川向こうのジェロ吉さん
第1話 今日も平和です!
ボコボコと泡が鍋の底から上がってくる、今日も僕はポーションをひたすら作る。
裏庭の手入れで薬草のも作る。
ポーションの薬草は赤い葉っぱで、それを聖水という名の沸騰して冷めた水と一緒に再度沸かす。そしてそれに僕の魔力ヒールを注ぐ。
少しして鍋の上部が明るくなり出来上がった事が分かる。
「出来たのかい? 冷めたら瓶に注いで蓋をしな!」
ばあちゃんから指示が来る。
此処は道から少し入った村、4、50人が暮らしている。
「今度はもう少し水を多くして薄めて作りな、その色だと効果が有りすぎて普通のポーションで売るとこちらが損をするからね、効果は傷さえ治れば良いんだからさ」
どうやら今回僕が作った物は良い出来であるみたいだ。
「他所で薄めて売られて倍になったら、また買いに来るのも遅くなる、そしたら今度の卸す日程が崩れて作っても売れなくなり、又作る手間が損になるからね」
商人の定期巡回は決まっているけど、ポーションを求めてくる商人は一定間隔で此処を訪れる、それに合わせてポーションを制作している。
「さて奥にいるから、お前の小遣い稼ぎをして良いよ、今日は後何回ヒールが出来るんだい?」
2回魔力を使ってポーションを作ったので、後ヒールが出来るのは3回だ!
「3回かな、誰か野菜を持ってくるかな?」
「さぁ、もし来ないなら畑から何かを持って来てくれよ、夕飯のスープの具が無いと味気ないからね」
此処の村で、高いポーションを買って使う村人は皆無だ!
皆んな野菜と交換で俺にヒールの治療を頼んで来る、僕としては肉がたまには食べたいけどね。
そして日が傾く頃に、親に連れられた子供がやってくる。
「大変なんだよ、太ももを何処かにぶつけた拍子に切れて血が止まらないんだ!」
「エーン、痛いよ血が血が」
よく見ると右の太ももに布が巻かれている。
「お母さん、その布を取って洗うから」
僕は慌てて、空桶を下に置いて上から一度沸騰して冷えた水をかける。川の水よりも良いと思うから。
そして血が流されて、切れた太腿にヒールをかける。
傷は見るみる内に塞がって血が止まる、そして再度水を掛けてあげると綺麗な太腿が現れる。
「さあ治ったよ、今度は気をつけて遊びなよ」
「あのーこれで大丈夫でしょうか?」
お母さんは俺に葉物野菜を差し出してくる。
「ええ喜んで受け取りますよ、又何か合ったら来てください」
「お兄ちゃんありがとう」
女の子とお母さんは出て行った、その途端におばあちゃんが顔を出す。
「スープの具が出来たね、なら私が料理をしようかい! 竈門に火を起こしてくれ」
俺はポーションを作る竈門から、台所の竈門に火を持ってくる。
「あっちの竈門はポーション用だから間違っても料理をするんじゃ無いよ! ポーションに魔力を渡してくれる妖精が怒るからね!」
魔力を注いでいるのは僕で妖精で無いはずなんだけどね?
「何時も可笑しな首振りはしないんだよ、昔からあの竈門には妖精が住んでいると言われているんだからさ!」
昔の話をされても僕には分からない、だって何時も俺が魔力を注いでいるんだからさ!
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