第39話


「いつまでも、絵本作家なんて通用しないぞ」



仕事部屋のドアを開け、奥のデスクチェアに座る琥珀に、そう言った。



「だから、なんだ?」



俺と同じ蒼色の瞳が、俺を見据える。


俺はカラコンだが、琥珀は裸眼。



「全て何もかも、話してやれば良いだろ?」


「話してどうなる?」


「姫は、自分の名を知りたいだけだ。

それぐらい教えてやれよ」


「話しにならない」



毎回の事だが、琥珀に対して、熱くなる自分に失笑してしまう。


無関心、無感情の琥珀に、何を言っても無駄なのは、昔からだ。



昔……?



どれくらい昔なのか、覚えていない。


長い年月を、共に歩んできた様に思う。


もしかしたら、それは前世からで、何百年も一緒に居る様に思う。



記憶間違い……?



そう問い掛けられたら、そうかも知れない。


多分、俺も姫と同じ。


永遠と言う名は、琥珀がつけた名。



記憶障害……?



明日になれば、今日、あった事を忘れる。


それも、昔から……?



「仕事だ」



その言葉が聞こえた時には、部屋のドアがパタンと閉まった後だった。


多分、二、三日琥珀は戻らない。


きっと、この先も続くだけだろう。


何1つ変わらない日常が……

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