第28話
確か、この先にアーチ型の門があったはず。
月明かりだけを頼りに、足を進める。
カサッ!
その音が聞こえ、ビクッとする。
足元を確認して、枯れ葉を踏んだ事に気づいた。
だから、暫く動かずに、様子を伺う。
誰の足音もしない。
グズグズしていたら夜が明ける。
そしたら、また何も変わらない日々が続くだけだ。
それだけは嫌だ。
もう、琥珀の言いなりには、なりたくない。
ほんの少し足を早く進め、辿り着いたアーチ型の門の前。
手で押すと、静かに開いた。
もしかして、罠?
それでも、良い。
とにかく1秒でも早く此処から離れよう。
アーチ型の門から出て、ひたすら足を進めた。
交差点で左に曲がる。
何も考えず、何も思わず、足を進める事に集中する。
そろそろ、夜が明ける。
もっと早く、もっと遠くへ。
羽があれば、空を飛べるのに。
そんな事を思ってみても、私には羽がない。
カゴの中に確かに私は居た。
飛べない小鳥だと、私は思っていた。
飛べないんじゃなくて、ただ、飛ばなかっただけ。
カゴから外に出れば、全てが終わると勝手に思っていただけ。
こうやって、外に出れば、私は自由。
もう、琥珀が居る場所には……戻らない。
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