第20話


頭がズキズキと痛む。


公園の中に足を進め、そこにあるベンチに腰掛けた。


空が茜色に変わろうとしている。


でも、頭が痛くて、立ち上がる事も出来ない。



覚えてないことを思い出すのは……危険?


私の中にある警告音が鳴り続けるのは……何故?



私は、何歳までの記憶がないのか分からない。



知りたかったのは……自分の名前。



何人もの人達とすれ違った。


だけど、私の名前を呼ぶ人は居なかった。



もう少し先に行けば、何かが変わる様な気がするのに、頭が痛くて立ち上がる事も出来ない。



「君は、やはり何も分かっていない」



その言葉と同時に、身体を抱き上げられた。



「……琥珀……」



名前を呼ぶだけで、精一杯なのは、頭がズキズキと痛むから……



私に無関心な琥珀が、私を見つけた。


私が居ない事が分かっても、知らん顔をすると思ってたのに……




「君が、知りたいのは?」



後部座席に私の身体を抱いたまま乗り込んだ琥珀が、そう問い掛けてきた。


運転席には、永遠が居る。



私が、知りたいのは……?



そう疑問に思った時には、暗闇に堕ちた。


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