第11話


今は、何月だろう……?



ふと、そんな事を思ってみても、今日が何月何日さえ知らないから分かるはずもない。


それが分かる様な物は、部屋の中にはない。


部屋は、生活しやすいような温度に保たれている。


その温度を調整しているのは、琥珀。


だから季節が分からない。


唯一、分かっているのは、曼珠沙華が咲くのは、9月だと言う事。



時計さえもない部屋で過ごす私は……誰?



何回も、何十回も、何百回も、疑問に思った事。



私は、何の為に、生きているのだろう……?



そんな事すら、分からなくなる時がある。



私が住んでいる家が、どんなものなのか、見た事がないから分からない。


ベッドの上で身体を起こし、部屋を見渡す。


真っ白な天井と真っ白な壁。


猫足のセミダブルベッドも真っ白。


シーツも、真っ白。


息が詰まりそうな感覚になり、ベッドから出てベランダに続く窓際に立つ。


外を見ると、土だけがある広い庭が見える。



まだ、曼珠沙華は、咲いていない。



庭のずっと向こうには、塀がある。


その向こうは、何も見えない。



何故、何も見えないのだろう……?


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