第23話
【Ⅱ】♠♠
23
キムとアカネが向かっているのはアイムの家だ。
もちろん何処に在るかなんて知る筈も無い。
でもアイムが白樺林にやって来た道を辿れば良いのだ。
途中、置いてきぼりにしてきたムキムキ先生を気の毒に思ったキムは振り返った。
ムキムキ先生はポカンとして二人を見ていた。
何故かムキムキしたものは内股だった。
・・・・・なんで人は心もとなくなると内股になるんだ……・・・・・
漠然とそんなことを考えながら、思いっきり媚を込めた笑顔で大きく手を振った。
先生は「はいはいσ( ̄∇ ̄;)」と言いたげな手振りを投げやりに1度だけ返して、すごすごと戻って行った。
森のようになってしまったので獣道ほどの常態ではあるが、二人は明らかにアイムが通って来た方向へ向かっていた。
アカネ:「3年間学校に通ってたのに、なんで私達この山を越えようと思わなかったんだろう…………」
キム:「確かに…………
男子からも聞いたこと無いよね…」
アカネ:「なんか暗黙のうちに、この山へ入るのは悪いことみたいな意識無かった?
『裏山探索は校則で禁止』みたいな……
そんな校則無かったのにね…」
キム:「もし校則にあったとしても、この学校の生徒は規則に大人しく従うタイプじゃ無かったし…
なんでだろう……?
無意識に行動を制御する何かがあった?
例えば恐怖心とか……?」
アカネ:「恐怖を感じたことは無いけど、グラウンド際の林より奥には行けないと何となく思っていたことは確かかも……
この林意外に奥深そうだし」
キム:「ねぇ……あれ何だろう……」
20分程山を登り、なだらかな下りに入って数分歩いた時、石碑のようなものが見えてきた。
二人は小走りで近づいた。
オフホワイトに近いベージュの石には、JIN博士とだけ刻まれていた。
キム:「これ…………
ひょとしてお墓?」
アカネ:「こんな所に?……」
キム:「記念碑とかだったら説明文的なものも彫られてるよね……」
アカネ:「確かに……
でもこんな山の中に…………違法じゃない?!」
キム:「私有地だったら?……」
アカネ:「ねぇ、ちょっとあれ見て! 建物?」
キム:「ほんとだ…………
ってことは、やっぱここ私有地……
ヤバくね?!」
アカネ:「そっか……
この山そのまま丸ごと私有地かも。
そのことが私達の脳裏に何処からか入ってたんだよ」
キム:「噂とかでね!
だから立ち入り禁止的な意識があったんだ!」
アカネ:「戻ろ戻ろ! 不法侵入だよ!」
キム:「だけど少年の家かもしれないじゃん!
道に迷ったふりしてちょっと聞いてみない?」
アカネ:「んもう、キムったら…………」
とか言いながらアカネの方が行く気まんまん。
先立って館に向かう道を歩き出した。
好奇心に於いては二人とも負けていない。
ただ一応常識を言葉にして『私は止めたんだからね』という言い訳を用意しておくのがアカネだった。
二人は探偵よろしく抜き足差し足で館に近づいた。
寧ろ怪しいことこの上ない。
づつく
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