第24話

【Ⅱ】♠♠

24


アイムは改めて祖父との思い出に浸っていた。


祖父と言ってもアンドロイドのアイムにとって本当の祖父であろう筈が無い。


アイムを作った仁博士は100歳まで生きた。


つまりアイムを作ったのは87歳の時。

その2年前一人息子を50歳の若さで亡くしていた。

交通事故だった。


息子もまた優秀な科学者で、仁博士と共に様々な研究を重ねていた。


ある時期から、親子で共有する研究目的に邁進するようになり、道を歩いて居てさえその研究に没頭する心が注意力を奪い、交通事故へと繋がってしまった。


仁博士は失意の中、自らの最期が近いことも痛切に感じ始め、息子に後を引き継がせる筈だった研究を続けるためにアイムを作った。


アイムは容姿はもちろん、内面的にも息子をモデルにして作られた。


誰にも館に近づけさせないために仁博士が施した人牽制センサーを、アイムは再びONにした。

人が無意識に心身両面で受け取る、山に入ってはいけないという、例えばサブリミナル効果のようなものも含まれた情報を流すセンサーだ。


学校が近いこともあって、研究の邪魔が入らないよう、客を呼ぶ時以外は常に作動させていたが、アイムが旅立つ時止めてあった。


・・・・・これで完全なプライバシーを得られる・・・・・


アイムはホッとしてソファに腰をおろした。


それから仁博士と過ごした愛しい時間を辿った。


仁博士が招待する友達の殆どは科学者仲間で、皆博士を『ジン(仁)ちゃん』と呼んでいた。


アイムは最初それを真似ていたが、初めて仁博士の友達に孫だと紹介された日、


ジンハカセ:「お前を私の孫ということにするから、これからは私を『ジイ(爺)ちゃん』と呼べばいい!


ジンちゃんとジイちゃんなら間違えても解りゃしないからね」


と仁博士は微笑んでいた。


そしてアイムがアンドロイドであることは、仁博士が信頼できる数人の仲間だけに伝えた。


決してとは言わないが、他にはあまり知られないようにと仁博士はアイムに言った。

どうしようもない究極の場面で、信頼できると言い切れる相手なら話してもいいと。


それから仁博士は死の直前

「派手なパフォーマンスはするな!

目立たないように生きろ!」

と繰り返し言っていた。


今ならその意味がアイムにも分かる。

ただの天才として生きるノウハウもアイムなりに身に付けた。


仁博士親子が没頭していた研究の意味も少しづつ解るようになってきている。

アイム自身も同じ疑問を抱き始めたからだ。


それを解くための自分探しでもあった。



             づつく

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