第4話
次の日、いつも通り学校へ登校する。
毎朝校門前に佇み、風紀を乱していないかをチェックする体育教師にぺこりと頭を下げて挨拶をした。
入学から半年、やっとこの高校にも慣れてきたというところで昨日の話に戻ってしまうが、とんでもない事態に巻き込まれそうな予感がしていた。
おそらく、俺は上原に目をつけられてしまっただろう。カースト底辺に近い俺がカーストトップに君臨する奴に唾をつけられるとはどういう意味かわかるか? つまりは『死』を意味する訳で、たまったものじゃない。穏便な高校生活を期待していた自分の思いとは裏腹である今の状況に嫌気が差す。
俺は嫌な思考が脳裏を過ってしまい、一人で深いため息をついた。
今から授業だという陰鬱さとダブルコンボで一気にやる気がなくなる。
しかし、まだわからない!
もしかすると、今考えていた悪末は杞憂に終わるかもしれないし、俺みたいな陰キャにはさほどの興味も向けられていないかもしれない。そう思うと、少し気分を取り戻す。
「…………まあ、大丈夫だろ」
自身に自己暗示をかける。
ガッと、自教室の扉へと手をかけ開く──すると、俺が教室に入ってきたことを確認した途端に男女共に、驚き? と共にざわつきの声が耳と視界に入り込んできた。
その様子にバツが悪くなり、自分の席へと直行する。
「一体なんなんだ……?」
通学鞄を横にかけて、
──俺が席に着くや否や、隣人の『ツンツンお嬢様』が体をこちらに向けた。すると、眉を顰めてハの字の形にするのが見えた。
…………どうやら、心底穏やかな状況じゃないらしい。
「ねえ、星谷くん、あなた何か余計なこと言ったの?」
「…………は? 余計なことって?」
「とぼけないで。あなたが変な噂を流したことは知っているのよ!」
…………噂、なんのことだ? 思いを巡らせてみるが、昨日の放課後から今日にかけて誰とも話していないし、今日だって朝の校門前にいる体育教師に挨拶をしたくらい。
見当もつかず、今度は俺が眉を顰めた。
「本当になんのことなんだよ。言ってくれよ」
「え、ええっ……」
なんだかもじもじとした様子。
比崎は目を逸らすと周りの様子を確認してから小さな声で呟いた。
「だから……え、えっと星谷くんとわたしが付き合ってるって」
「はっ…………!?」
「なによ、やめてくれないかしら。そういう変なこと流すの」
「いや、俺そんなこと言った覚えないぞ……」
「…………え? どういうこと?」
そう聞くと長髪を耳にかけて、訝む。
『あの二人なんだか付き合ってるらしいよ!』
『しかも比崎さんがアタックしたんだって!』
『キスとかもうしたのかな?』
比崎は教室内での会話が耳に入ったのか、耳を塞いでは「あなたねえ……」と頬を赤らめて俯いた。
…………いや。ほんとに俺じゃないって!
教室に入ったときに感じた違和感の正体は『俺と比崎が付き合っているかもしれない』ことだった。……正直意味がわからない。
一体どのようにして、この噂が流れたのかは知らないが、火のないところに煙は立たないとは流石に別件で、そうそうにまとめられることではない。
「比崎、ほんとにこんなこと言ってないって」
「ほんとなの? やっぱり淫猥な目で……」
「みてねぇよ…………!!」
「怪しいわね……」
「怪しくないだろ、なんでわざわざこんな目立つような噂を流すと思うんだよ! できれば目立ちたくないって言うのに!」
やっぱり比崎は訝しめな目を向けて、ジトッとした目つきを示す。
ひとまず、比崎の誤解? が解けたのかどうかはわからないがコイツが言うには学校に登校したときには教室内で例の噂が広がっていたらしい。もちろん今も尚落ち着かずますます、燃え上がる一方で収まる気配はない。
クラスの様子は相変わらずで、そのまま一限の授業が始まってしまった。
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