第66話 魔法使い殺し

 ラビーはあたしと同じでアヴァロンでは珍しい辺境の地から出てきた学生。女子の平均身長くらいのあたしより頭ひとつ背が小さくて顔も幼い。中等部の学生が紛れ込んだと言っても誰も疑わない容姿をしている。


 彼女の成績はあたしとおんなじくらいで中の上くらい。魔法の実技においては、学年の中間くらいにいる。学科の成績より実技が少し上回るあたしと逆で、実技の方が少し苦手のようだ。


 学校内の魔法使い総合順位ともいえる「序列」においてもほぼ中間。だから、特別目立つわけでもなく、上級生や下級生でラビーのことを知っている人はあまりいないんだと思う。


 ただし、同級生の中では話が変わってくる。


 ラビーは、固有魔法の使い手。自分の意思で他の人が扱えない特殊な魔法をコントロールできるんだ。



 そして彼女の使う固有魔法は通称、「カウンター・マジック」。


 相対する魔法使いの魔法をすべて跳ね返す恐るべき魔法なのだ。


 だから、同級生はみんな知ってる。固有魔法を除いた「序列」、固有魔法を除いた対戦でラビーはそれほど力を発揮しない。けれど、ルール不問の状態なら、「最強の魔法使い」へと変貌する。


 誰が呼んだか、対魔法使い戦にだけ発揮されるラビーの力から、彼女は一部の人からこう呼ばれている。


 ――魔法使い殺し。



 ラビーの力は、「対魔法」にしか発動しないからいつかの野外実習での魔物相手とかでは使えない。

 でも、真正面からやりあったら魔法使いは勝てないとわかってる。思えば、あたしが模範試合に出場した時も、試合前に煽り散らかしてきたあのネータ・マーシィさんだってラビーが隣りにいると気付いたら引っ込んだくらいだ。


 ラビーは大人しくていい子だから、自分から手を出したりはしてこないけど――、同級生の間では絶対に逆らってはいけない、カードゲームならジョーカー的な存在なんだ。




 ラビーの特性を知らない後輩のモリーナからしたら訳がわからないだろう。序列に関してはそれなりに調べていたみたいだけど、数字だけじゃわからない力もあるってことかな?


 ナハトラさんたちが人を呼んでくれたのか、それともモリーナのの音のおかげか、暗がりでよくわかんないけど先生方と思われる大人があれよあれよと何人も集まってきた。


 どう事情を説明したものか……、傍から見たら丸焦げでぶっ倒れてる下級生と無傷で突っ立ってる上級生が2人。なんかあたしたちが悪いことしたみたいだ。


 そんなことを考えていたら、あとからナハトラさんがやってきて状況説明をしてくれた。彼女の説明力もさることながら、先生方だって「ブルーメ公爵令嬢」の言葉は疑わずに聞くんだ。ここに関してはそのお家の影響力に感謝しないといけないかもしれない。


 こうして――、あたしにかけられた呪法と、ナハトラさんに迫る危機は無事に回避できたのだった。

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