第三章 魔導競技祭典〈マギア・フェルスタ〉

第40話 概要


「えっと……選手ですか?」

「えぇ。一年生だけで行われる、新人戦のメンバーに選ばれたのよ。魔導競技祭典マギア・フェルスタの概要は知ってる?」

「いえ」

「じゃあ、軽く説明しましょうか」


 魔導競技祭典マギア・フェルスタは今はまだ、名前くらいしか知らない。俺はアリス先生の言葉に耳を傾ける。


魔導競技祭典マギア・フェルスタとは三つの魔術学院で競われる、魔術競技大会。毎年夏に開催されて、ルールは三つ。その三つも毎年変わるけど、基本的なコンセプトに変更はないわ。今年の競技は、〈魔弾決闘戦フェイタル・バレット〉〈魔術球技戦エーテル・ラリー〉〈解封戦域ディコード・ドミネーション〉ね」


 名前からしてなんとなく想像はできるけど……。ただ、今は気になることがあった。


「あの質問いいでしょうか」

「もちろん」

「自分的に、技術班で採用されると思っていたのですが……本当に選手なんですか?」


 俺はいまだに、選手として出場することを疑っていた。確かに体を動かすことは自信があるけど、一年生を代表するレベルなんだろうか。と自分では思っていたからだ。技術的なサポートをするのは、ある程度自信があるんだけど。


「今年はちょっと、魔術戦のルールが特殊なのよね〜」

「〈解封戦域ディコード・ドミネーション〉ってやつの話ですか」

「えぇ。軽く説明するけど、これは広大なフィールドに用意された五つのノードの制圧戦なの」

「ノード?」

「魔術的な封印がされたポイントのことね。それを解除しながら戦闘をする競技なんだけど──

「解除ってことは……もしかして、技術的な要素が必要になるってことですか?」

「そう。だから、あなたが選ばれたのよ」

「なるほど」


 広大なフィールドで三対三で行われる魔術戦──〈解封戦域ディコード・ドミネーション〉。そのノードってやつを解除しながら戦う必要がある。概要は何となく理解できた。


 きっと、一人は解除にまわって残り二人でサポートとか? 他にも色々な戦略が考えられそうだぁと俺は既に考え始めていた。


「近いうちにチームメンバーとの顔合わせがあるわ。それと、自分の出場競技以外もある程度把握しておくといいわ」

「分かりました。わざわざ丁寧にありがとうございます!」


 俺は頭を下げて、先生の部屋を後にした。

 〈解封戦域ディコード・ドミネーション〉か。三人一組で行われる魔術戦だけど、チームメンバーは誰になるんだろう。しっかりと協力して競技に臨むことができたらいいけど。



 昼休み。俺はフィオとティアの二人に今回の件を伝えることにした。


「え……!? アレンくん、選手なんですか!? 凄いですね!」

「そうかな?」

「えぇ。魔術戦は毎年、花形の競技で一番盛り上がるんですよ!」

「そうなんだ……」


 うーむ。本当に俺がそんな競技に出場して大丈夫なんだろうか。今は少しだけ心配の方が強かった。


「へぇ。アレンは魔術戦なのね」

「ティアはどうなの?」

「私は〈魔弾決闘戦フェイタル・バレット〉に出場するわ」

「おぉ。なんかカッコ良さそうだね!」

「ふふ。まぁ、精一杯頑張ってみるわ」


 ティアは〈魔弾決闘戦フェイタル・バレット〉に出場するようで、俺としても今から楽しみだった。


「私は技術班なので、いろいろとサポートしますよ! お二人とも頑張ってください!」


 フィオは明るい声でそう言ってくれた。


 正直なところ、俺自身も本当は技術班で裏方のサポートに回りたい気持ちがあった。だが、それはもう叶わない。選手に選ばれた以上、その責務を果たさなければならない。


 放課後。さっそく〈解封戦域ディコード・ドミネーション〉に出場するメンバーとの顔合わせが予定されていた。一人で演習場へと向かう途中──そこで、偶然にもロイドと鉢合わせした。


「やはり、アレンも選ばれていたか」

「ってことは、ロイドも新人戦の選手に?」

「あぁ。改めて、よろしく頼む」

「うん」


 俺たちは軽く握手を交わした。

 ふぅ──とりあえず、知っている顔が一人でもいるのは心強い。そう思っていると、演習場に微かな足音が響いてきた。


 やがて視界に入ったのは一人の女子生徒。真っ黒で艶やかな長髪を風に揺らしながら、凛とした足取りでこちらへと近づいてくる。その雰囲気は静かに研ぎ澄まされ、鋭い視線が周囲を切り裂くようだった。



「──あんたたちが、新人戦のメンバー?」



 値踏みするような眼差しと、冷え切った声色。瞬間、場の空気が張り詰め、肌に刺すような緊張が走った。


「ロイドは分かるにしても、これ誰?」

「えっと。アレンと言います」

「アレン? 知らないわね。本当にこんなので大丈夫なの?」


 す、すごい辛辣だ……。

 下層者だからとか、そういう偏見とは無関係に、ただ純粋に厳しい視線を突きつけられている。その冷ややかな雰囲気に思わず背筋が強張った。どこか……怒った時のエレナさんを思い出させる。


「サクラノミヤ、あまりアレンを威圧するな」

「あら? あなたが誰かを庇うなんて珍しいわね」

「アレンは俺よりも強い。選手として選ばれるのは当然だ」

「へぇ……あの傲慢なロイドが認めるやつなんだ。面白いわねぇ……」


 サクラノミヤさん? は俺のことをじっと見つめてくる。


「サクラノミヤさん……えっと──」

「アオイでいいわ。私、家名って嫌いだから」

「じゃあ、アオイさん」

「さんもいらないし、敬語もなし。無駄なことにリソースを割く必要はないわ」

「……」


 俺は改めて意識を切り替えて、アオイに話しかける。


「こほん。アオイ。俺も選手として選ばれたからには、ちゃんと役目は果たすよ」

「へぇ。アレンって言ったわね。じゃあ──ちょっと模擬戦でもしましょうよ。本当に選手に相応しいか、私がみてあげる」

「えっ……?」


 ということで、俺は唐突にアオイと模擬戦をすることになった。

 

 う、うーん。この調子で新人戦は大丈夫なのかなぁ……?

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