第24話 ダンジョン脱出と灼き豚
池袋ダンジョン5層
ゲートを抜けた先で俺を待っていたのは幻想的な光景だった。
「凄い…綺麗…」
1層から4層までの石造りの迷路とは違い、5層はまんま鍾乳洞。
動画で見た事はあったが赤や紫、緑色の巨大なクリスタル岩壁や天井を飾り、淡く光るそれらは宵闇の宇宙を照らす星々の輝きに通じるものがあって目を奪われた。
「これでクリスタルが売れたら良かったのですが…」
天井を見つめながら呟く。
この輝くクリスタル達、実は1円にもならない。
理由は簡単、採掘した瞬間に輝きを失ってただの石になるから。せめて水晶みたいに透き通っていれば良かったんだけど…あれダンジョンの魔力の輝きが透過してるだけらしいんだよね…
「まぁ…感動はプライスレスです、脱出ゲートを確認しましょう」
気持ちを切り替えて脱出用のゲートへ向かう。脱出用ゲートは通ってきたゲートの2m真横にあったから直ぐ分かったよ。
ヌプッ…
手がズブズブと入っていく。
とりあえずは帰れそうだな…このまま豚置いて帰ろうかな…
頭をよぎる。でもあいつは俺の3000円(魔石)を持ってるからそうもいかんかぁ…
ギリギリで思い直し、帽子とマスクを外して髪の毛を振る。
マスクは息苦しいし、蒸れるんだよねずっと帽子被ってると…だからめちゃくちゃスッキリするわ。
「ふぅ…」
髪を後ろに流してから再度の装着、これで暫くもつやろ。
「…あ…え?」
「ん?」
マスクをつけようとして、まぬけな声がしたので横を向く。
気配察知は切っていなかったので帽子取るくらいで来てたのは気づいていた。豚だ。
手には赤ちゃん拳くらいの魔石を持っていて唖然とした顔でこっちを見ている。
「なんですか?豚」
「…え、やっぱ…橘さんです…よね?」
何言ってんだこいつ、頭バグったか?
「見たらわかるでしょう、気が狂いましたか?」
「え…え?美人すぎません?え?」
あー…豚の反応で全てを察した。
そういう事ね?
ここまでそれどころじゃ無かったし、そもそもくそ雑魚ナメクジすぎて眼中に無かったから忘れてたが、俺こいつにご尊顔一回も見せてなかったわ。
「はぁ…何を言っているのか、よく分かりませんが魔石はちゃんと取ってきた様ですね」
美少女力に圧倒されている豚に普段通りに話しかける。あ、これポイントね?
俺は自分が超級美少女である事は自覚している。でもさぁ、こう…自分からそれを主張するのは違うんだよな。
容姿とかに本人は無関心でさ、誰とでも普通に接する童貞殺しみたいなムーヴかましたいんだよねぇ…わかる?
だからこれが正解な訳。真っ直ぐ豚を見る。
「あ…はひ!ここにっ!」
手に持った魔石をこちらに突き出して見せてくる。顔真っ赤で草ァ!
こんなゴミ野郎でもこういう反応されるとっぱ気持ちいいわ!肯定感ぶち上がり。
「良くやりました、では受け取ります」
豚から魔石を貰う。この時にちょっとだけ手が触れるのも忘れずに。
「あ…あぁ!ありがとうございます!!」
お礼言い出したんだがwwwwww
こいつ童貞だろwwwwwww
俺はなんとか笑わない様に耐えながら無表情で頷く。
「脱出ゲートは通れる事を確認済みです、では帰りますよ」
「手…手が…それとおんぶ…触った…」
「…いつまで呆けているのです、早く帰りますよ」
蹴りをいれる。
ちょっとスンってなったわ。こいつそいえば豚野郎だった。
「痛い…でもそれもいい…」
ん?なんて?今ヤバい事言ってなかった?
「うるさいですね…早く行きなさい」
「あぁ!」
ゲートに蹴り入れる。なんか豚が変なゲート開いた気がしたがいいや。
とりあえず帰ろう。
報告する事も山のようにあるしな。
俺も豚に続いて脱出ゲートへと入った。
池袋探索者支部…ダンジョンの入口。
黒い視界が晴れ、浮遊感も無くなる。
俺は今、間違いなくゲートを抜けてダンジョンから出てきた筈…だよな?
「た…橘さん…」
「……」
情けない顔をした豚野郎の声。
辺りの状況の把握からする。
破壊されたダンジョン改札に鉄柵。ひび割れたアスファルト……そして
回りを取り囲み、殺気を向けてくる30はいるモンスターの群れ。
俺は黙って鯉口を切り、夜桜を抜いた。
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