第52話 VSバルガン②

「「「「ハデルがバルガンと戦っている(の)(って)」」」」


お城に避難した私達の元に騎士が走ってきた。


「はっ、騎士が探しに行った時にはもう交戦状態でした」


「何故、そんな事になっているのですか?」


マリアンヌが震えた声で聞いている。


「はっ! あくまで聞いた話ですが……ブツブツと独り言を言っていて、その後に急に走りだしたそうです」


「独り言? 一体何を言っていたの……」


リリアが騎士に聞いている。


ハデルは一体なにを言っていたの……


「所々聞き漏れがありますが……「僕がやるしかない」「大切な存在」「ライト様、マリアンヌ様、リメル様、リリア様」「守る」「戦う」「死ぬ」その様な言葉をブツブツ言いながら走っていたそうです」


「「「「!?」」」」


私達の為……ううん、きっと私の為にハデルはバルガンと戦う事を決めたんだ。


「ゴメン、僕今すぐバルガンと……」


「待ってリメル私も行くわ」


行きたいよ……行って一緒に戦いたい。


だけど、私達は『勇者パーティ』なんだ。


「待って! リメル、リリア、私達は勇者パーティだ。 私達しか魔王は倒せない……それに私達には命の序列がある。行かせられない」


「そうね…….」


マリアンヌは唇を噛んで悔しそうにしている。


唇からは血がうっすら流れていた。


「通信水晶で……見られますか……」


「はっ」


リメルとリリアは崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。


ハデル頼むから死なないでくれ……


多分、その鎧でもバルガンには勝てないから……


逃げて……


自分が勇者なのがこれ程口惜しく感じたことは無いわ。


◆◆◆


「ぐあっはははははーーーオラオラオラーーっ」


バキバキメギッ ドンガラガッシャ―ン。


バルガンの拳を受けまたもや家を数軒程壊し僕は倒れ込んだ。


この勝負……圧倒的に僕が不利だ。


この鎧はどんな物からでも僕を守ってくれる。


だが、体力の消耗は防げない。


叩きつけられ、その度に立ちあがるのが案外キツイ。


瓦礫を避け立ちあがるたびに体力は消耗する。


そして、問題は、大きな瓦礫の下敷きになれば僕にそこから抜け出す術はない。


「ハァハァ、バルガン、お前は武人の様な存在だと僕は思っている。ここでは被害が気になるから、僕は本気で戦えない……もし本気の僕と戦いたいなら、場所を変えろ」


これでどうだ……


乗ってくるか。


「ほう、ここでは本気で戦えない! そういう事か? ならば、どうする! どこでなら本気を出せると言うのだ!」


どこだ?


何処がいい……良し、あそこだ。


「この王都には闘技場がある。 あそこなら周りを気にせず戦う事ができる……ついて来い!」


「闘技場か! 戦いに相応しい場所だ! その提案受けた!」


どうやら、望みは繋げられたようだ。


◆◆◆


王都闘技場。


この場所は人間のみならず魔物を戦わせる事がある為、特殊な鉱石を含んだ素材で作られている。


そう簡単には壊れないだろう。


「此処か! 此処ならお前は本気を出せる! そういうことだな?」


「ああっ」


此処は広い。


だから、思う存分避けられる。


「ああっ、ここなら本気で戦える!」


「それじゃ行くぞ!」


神眼。


轟音を立てて、バルガンの拳が迫ってくる。


此処なら、避けられる。


街では逃げ道を塞がれて上手く逃げられなかった。


だが、ここなら大丈夫だ。


ドガッドガガガガガッ


バルガンの連射の様なパンチも辛うじて避けられる。


「どうしたバルガン! どんな攻撃も当たらなければ意味がないぞ」


「この! ちょこまかと! 男なら真向勝負で殴り合って見ろ!」


そうくるよな!


「ならば受けてやる!」


ドガドガッ、バキッ ガガガガガガガッドガッ


殴られ、転がされるが、こたえない。


瓦礫をどかす手間が無い分。


ただ、起き上がれば良い。


随分と体の負担が無くなった。


周りが開けた闘技場だからこそだ。


これなら殴られている間は休んでいるのと変わらない。


「オラオラオラーー! どうした手も出せんのか!」


打撃はほぼ通用しない。


よく見るとバルガンの拳が赤くなっている。


固い物を殴りつけていればそうなる。


バルガンに対して迎撃の姿勢をとる。


この鎧には腕の内側に鳥の爪のようなものがあった。


バルガンのパンチにあわせて腕を突き出す。


バルガンのパンチと重なるように軌道を修正。


バルガンの腕の部分を鳥の爪の部分にひっかかった状態で打ち抜いたから。


拳からひじにかけて引き裂く事が出来た。



「これを狙っていたか! 良くぞこの俺を傷つけた!」


引き裂いたとはいえ、腕の表面を削いだだけだ。


とは言え、肉を抉って裂いたのだから普通は痛がるだろう。


「ふっ、調子に乗っているからそうなるんだ! 虫けらだって殺されそうになれば噛みつく! 人間を舐めてかかるからそうなる」


普通に殴っても蹴りを入れても効かない。


だから、今みたいなカウンターしかない。


バルガンの攻撃を利用すれば少しは効く。


「よくぞ、この俺を傷つけた! その名誉と共に死ねえぇぇぇぇーーー」


確かに普通の人間なら痛がるような傷だ。


だが、痛いだけで致命傷じゃない。


ましてガルバン程の相手ならこんなのただのかすり傷に過ぎない。


その証拠にすぐに反撃してきた。


ガッーーーン


強烈なアッパーが顎に打ち込まれる。


この鎧は顎もしっかりガードされているが……


相変わらずの馬鹿力だ。


上空まで飛ばされていく。


近くにある教会の塔より遥か高く上空へ飛ばされた。


この鎧は鳥を模している。


できるかは分からない。


だが……飛べ!


そう心から願うとそのまま飛翔していった。


流石に自由自在に飛行は出来ないようだ。


羽を広げ、少しだけ更に上昇していく。


後は落ちるだけだが……狙う。


頭の部分の嘴を地面に向ける。


頭の中に女神、鳥とイメージが湧く。


「ゴッドネスバーード!」


叫びながら、空から舞い降りた鳥をイメージして頭から突っ込んでいく。


標準をバルガンに合わせ突っ込んでいく。


「迎え討つ!」


バルガンが僕に標準を併せて拳を振り上げていた。


だが、そんなの気にしない。


「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーっ」


ドガーーーーン


僕とガルバンの拳がぶつかり、辺り一面に大きな音が鳴り響く。


僕の体に痛みは無いが衝撃が走った。


これでどうだ!


普通の人間なら高い所から落ちてきたレンガが当たれば打ちどころによっては死ぬ。


僕の体重に固い鎧。


これを腕で迎え撃ったんだ。


幾らバルガンでも、只で済むはずが無い。


「むん! なかなか良い攻撃だ! この痛みは心地よいぞ! さぁ、俺をもっと満足させてみろ……もっと、もっとだぁぁぁぁーー女神の戦士!」


さっき迄とは違う。


明らかに腕が折れている。


なのに……バルガンは嬉しそうに笑っている。


この、戦闘狂。


これで、終わらないなら……どちらかが、死ぬまでやるしか無い。








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