第50話 死ぬ事などは怖くない。


「「「「バルガンが地上に出て来る!」」」」


私達、勇者パーティの四人は驚くしか無かった。


下級や中級の魔族がダンジョンより出た話は聞いた事はあるけど、上級魔族、それも四天王クラスの魔族がダンジョンより出て来たなんて話を聞いた事が無い。


だが、問題は……


「それで、バルガンを私達でどうにかしろ……そういう話しですか?」


悔しいが、今の私達にはバルガンと戦う術は無い。


それに、バルガンに勝てた勇者は居ない。


『単純な戦闘なら魔王より強く魔国最強の戦士』それがバルガン


「魔王を倒す事が出来るのは勇者と聖剣のみ……魔王と戦う前にバルガンと戦う等求めておりません。いえ、バルガンは勇者が戦ってはいけない相手です……それは分かっておりますので王城へ避難をお願い致します」


「そう……ですか」


流石に今の私達にはバルガンは荷が重すぎる。


ううん……恐らくは生涯勝てない。


戦いを回避して、魔王を目指す。


それが勇者としての人類側の在り方だわ。


「私も正直ほっとしているわ」


「僕も……」


「私も……」


「それじゃ、今すぐ馬車にお乗りください! すぐに王城に向かいます」


すぐに、確かにその方が良い。


バルカンと鉢合わせになったら全てが終わる。


「ちょっと待って! まだハデルが戻ってきてない」


「買い出しだから直ぐに戻るわ。少し待ってくれない?」


「僕が様子を見て来ようか?」


「私も行くわ」


「待って下さい! 万が一バルガンに出会ってしまったら、大変な事になります。ですから、このまま、馬車で王城迄来てください! ハデル殿なら私達の方で探します」


クッ……こういう時、勇者パーティは不便だ。


「「「「分かった(よ)(わ)」」」」


自分達の使命、命が優先だから我儘はいえない。


こうして私達は王城へと逃げる事になった。


◆◆◆


「バルガンがこっちに向かって来ているぞーー」


「皆、すぐに逃げるんだぁぁぁぁーー」


僕が街で買い出しをしていると沢山の冒険者がそう言いながら走り回っていた。


バルガン……あの化け物が、ここに向かって来ているのか。


『剛腕のバルガン』別名『勇者殺しのバルガン』


間違ってもライト様達と戦わせるわけにいかない。


だが、バルガンが王都迄攻めてくる理由はなんだ。


恐らく、ライト様達勇者パーティだ。


強者との戦いを望むバルガンが王都にまで攻めてくる理由は他にはない。


ライト様達は……逃げるのが正解だ。


絶対にバルガンに勝てない。


歴代の勇者様達もバルガンは避けて魔王と戦った。


そして、避けきれなかった勇者は、全員死んだ。


転移してきた天城様という勇者でもバルガンには勝てなかった。


だから、逃げるのは正しいし、多分逃がして貰えると思う。


だけど……それは恨みを買う事になる。


過去に村や街が襲われている状況で見棄てた勇者はどうだった?


生き残ったその村や街の人は『何故来てくれなかった』『何故助けてくれなかった』と生涯勇者を恨んでいた。


まして、ここは王都。


ダンジョンを攻略し魔王と戦うには此処を拠点にしないとならない。


いわば、ライト様達の生命線となる街だ。


だったら……僕がやるしかない。


僕は、施設を救う為、死ぬ為に勇者パーティに入った。


だけど、事情を知ったマリアンヌ様が施設の皆を助けてくれた。


そして、僕に新しい居場所をくれた。


だったら……どうする?


返しきれない程の恩がある……


それだけじゃない。


ライト様、マリアンヌ様、リメル様、そしてリリア様。


今の僕にとっては家族みたいな存在だ。


彼女達の名誉を守る方法は1つしか無い。


だったら、僕が戦えば良い。


元は死ぬ予定だった。


死ぬ事なんて僕は怖くない。



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