第36話 怖がられる
あらためて周りを見渡すと凄まじく残酷な光景が出来上がっていた。
剣や魔法で倒されたなら、ただの血なまぐさいだけで良いが。
まるで鈍器による撲殺だ。
金属の塊による撲殺死体。
凄まじく凄惨な光景が広まっている。
「「「「「「うがぁぁぁぁ」」」」」」
僕を蹴ったり殴ったりしていたオーガは涙ぐみながら逃げようとしているが足の骨折が酷く動けない。
オーガの精神状態からしたら、もしかしたら『早く楽にして欲しい』
そう思っていてもおかしくない。
「ごめんね……」
そう詫びながら身動きがとれないオーガの頭を蹴り潰していった。
僕の殺し方で楽に殺せる方法はこれしかないから。
はぁ~心が痛む。
剣で殺すと楽に殺す事ができる。
だが、撲殺は、酷いなんてもんじゃない。
肉片が飛び散り苦しみながら殺すことになる。
死体もまるで……そうオーガに嬲り殺しにされた人間みたいだ。
流石に吐きはしないがいから『うぷっ』こみ上げてきた。
だけど、この鎧を着ると言う事は、この戦い方しかできない。
慣れるしかないな。
あっ、すっかり忘れていた……馬車……
馬車に駆け寄りドアを開けた。
中には三人の女性がいた。
身なりの良い幼い女の子二人にメイド服の女性。
多分、二人は貴族だ。
金髪の盾ロールの吊り目の女の子に銀髪のショートの垂れ目の女の子。
メイドは黒髪、黒目の少し大人の女性だ。
「きゃぁぁぁぁーー来ないでぇーー! 来ないでぇーー!」
銀髪のショートの垂れ目の女の子が泣き叫んでいた。
「あの……もうオーガなら倒しましたよ。大丈夫ですよ」
「いやぁぁぁぁーー怖い、怖いよーー! こわいぃーーよー」
オーガじゃない。
僕を怖がっているようだ。
「あっ、あの僕」
「静かになさい! セリア!」
バチンッ
いきなり、泣いている女の子をもう一人の金髪の女の子がビンタした。
「ううっ、お姉さま!」
「いかに残酷な存在でも命の恩人ですわ! 貴方も貴族の端くれなのですからしっかりなさいませ! この度は助けて頂き有難うございます。モントリオール伯爵家の長女セリナと申します。横にいるのが次女のセリア、そこの使用人がマリルと申します」
「ご丁寧に、僕は希望の翼所属のハデルと申します」
「あらっ、希望の翼といえば、あの勇者パーティの……流石の実力ですわね。それでお願いがあります。お礼は出しますので……」
「あっ! ハデルいたぁ。 いきなり走っていっちゃうんだから、僕心配したんだからね。 その鎧の性能を試したいんなら僕やリリアが手を貸すから……とは言っても、もう充分みたいだね」
リメル様が走ってきた。
「リメル様、申し訳ございません」
「こほん、あのお、取込み中申し訳ないですが、そちらは剣聖リメル様ですわね」
「うん?! 僕はリメルだけど?」
「それでお願いがあります。お礼は出しますので近くの街まで送って貰えないでしょうか?」
「別にお礼は要らないよ。街はすぐ傍だから送ってあげる。だけど、僕は馬車の騎乗は出来ないから歩きになるけど……」
「リメル様、僕騎乗できます」
「あっ、ハデルは出来るんだ。それなら問題ないね。うん、良いよ引き受けた」
「ありがとうございます。ほら、貴方達も……」
「「ありがとうございます」」
魔石を取る時間、待って貰い。
僕たちは街へと向かった。
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