第二章:旅立ちと異形の仲間
学園都市を離れ、険しい山道を進むエルフリーデの前に、一人の男が立ちはだかった。
いや、正確には男ではない。
鋭い爪と黄金色の瞳、そして背中にたたまれた雄大な翼を持つ、獣人のような姿。
それは、誇り高くも人間たちから疎まれる「ガルーダ族」の戦士だった。
「小娘一人でこんな山奥に何の用だ? 生贄になりに来たか?」
威嚇するような低い声。
しかし、エルフリーデはその瞳の奥に、警戒心と同時に深い孤独の色を見た。
「私はエルフリーデ。忘れられた観測所を探しています。あなたは?」
「……ライルだ。お前のようなひ弱な人間が、あの呪われた場所へ行こうというのか?」
ライルは、かつて観測所があったとされる「嘆きの山脈」の麓の村の出身だった。
村では、山に近づく者は災いに見舞われるという言い伝えがあり、誰も近づこうとしないという。
エルフリーデは、観測日誌の内容と、自分の懸念をライルに語った。
最初は半信半疑だったライルも、エルフリーデの真摯な瞳と、日誌に記された古代の叡智に触れるうち、次第に心を動かされていく。
彼の一族もまた、古の時代から世界の異変を敏感に感じ取る力を持っていたのだ。
「信じがたい話だが……この胸騒ぎは無視できん。それに、お前のような変わり者は嫌いじゃない」
こうして、意外な形でエルフリーデは旅の仲間を得た。
魔力は弱いが古代の知識に長けた人間の少女と、強靭な肉体と飛行能力を持つガルーダ族の戦士。
二人の奇妙な旅が始まった。
……
…
道中、彼らは日誌の記述を頼りに、いくつかの古代遺跡を巡った。
そこには、星詠みの一族が残したと思われる石碑や壁画があり、災厄の正体や、それに対抗するためのヒントが断片的に記されていた。
「闇喰らいの蝕は、異次元から現れる負のエネルギーの奔流……それは生命力を喰らい、世界を無に帰す……」
「それを食い止めたのは、『星の盾』を持つ勇者とその仲間たち……」
観測日誌と遺跡の情報を照らし合わせるうち、エルフリーデは一つの可能性に思い至る。
日誌の著者アストライアは、単に災厄を観測していただけではない。
彼女自身が、災厄を食い止めるための何かを探していたのではないか、と。
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