第41話 解錠師、もう一人の自分に出会う。
※本日2回更新です。
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意識が深い闇の中に溶けていく感覚。
その中で、俺の脳内にもう一人の自分の声が聞こえてくる。
【──馬鹿者が。あのような輩の吐く言葉に感情を左右されるからそうなるんだ】
「……だれだ?」
声が聞こえた瞬間、俺の意識がハッキリとする。
だけどあたり一面は真っ暗で、声の主がだれなのかわからない。
【俺がだれかなんてどうでもいいだろう。重要なのは『お前は負けた』という事実だけだ。俺の力を利用しておいて敗北するなど、お前は飛んだ負け犬だな】
何も見えない俺に対して、声の主はめちゃくちゃなことを言ってくる。さっきから何なんだコイツは……それに「俺の力を利用した」ってどういうことだ?
【察しの悪いヤツだな……まぁいい。何も知らない方が、こちらとしても好都合だからな】
声の主はそう言うと、囁くように「
次の瞬間、これまで見えなかった視界が回復し、暗闇の中で自分の体を視認することができるようになった。
【どうだ? これで少しは見えるようになっただろう】
声がした方向へ視線を向けると、俺とそっくりな顔をした、紫髪の目つきの悪い男が俺を見下ろした状態で立っていた。
解錠師しか使えないスキルを使った──ということはまさか、この男は俺とキー師匠以外の解錠師なのか?
そんな疑問が脳裏を過ぎるが、俺は
少なくとも、この男は敵ではないはずだ。
「──キミも俺と同じでここに閉じ込められているのか? だったら、俺と一緒にここから出られるよう協力しないか?」
協力しあってここから脱出しよう──そんな提案とともに手を差し出すと、その男はニヤリと笑いながら俺の手を取った。
【ああ、協力しよう。ただし条件がある】
「条件?」
握手しあった手のひらから、黒いモヤのようなものが浮かび上がる。
それは次第に俺と男を包み込んでいき、双方の魔力が溶け合っていくような感覚に陥る。
この魔力の感覚は……俺が魔力コントロールをするときに感じていた膨大な魔力!? ということはまさか──
「キミはまさか、俺の記憶の主!?」
【やっと気付いたか。だがもう遅い。お前の度重なる『修行』とやらのおかげで、俺という自意識が覚醒する準備が整ったんだ】
目の前に立っていた男が、煙となって姿を消した。
そして俺の体を奪うようにして流入してゆき、次第に肉体と魔力の感覚が曖昧になってゆく。
「やめろ……! 何をするつもりだ!?」
必死に抵抗しようとするが、俺の記憶の主は問答無用で、『俺』という自我を奪い去り、己の手中に収めた。
【なに、安心しろ。
男はそう言うと、俺の全神経のコントロールを奪い、俺という自意識がその男の記憶で埋めつくされていく。
膨大な情報の波に押しつぶされる俺は、ふたたび黒い闇の中へと身を沈めていった。
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※12時3分に更新します。
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