第35話 解錠師、天災の言い分を聞く。


※本日2回更新です。

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 それから二人の天災セレスターは、俺の目の前で正座をして頭を深く下げていた。

 なんか以前もこんなイベントがあった気がするけど、それは別にいいや。


「……さて。じゃあ聞かせてもらおうか。キミたちはいったい何者なんだ? なぜ俺たちを襲った?」


 二人を見下ろしながら俺はそう質問をした。

 まぁ二人の反応からして何をしに来たのかはなんとなくわかってるんだけど、一応本人の口から聞いておきたかった。


「……何故、か。そンなこと、テメェが一番わかってると思っていたんだがな」


 施錠ロックによって体を拘束されているバリオスが、ギロリとした目で俺を睨みつける。

 流石は天災セレスター。この程度の圧力じゃ口を割らないということか……。

 

「ああ、モアたちがここに来たのは封印解除された厄災ディザスターの確認と、解錠師であるあなたと接触するために来たんスよ。ですよねバリオス先輩」

 

「なッ、テメェ!!」


 かと思っていたら、同じく隣で拘束されているモアがフツーに口を割った。

 バリオスの様子を見る限り、できるだけ情報は渡さないようにするつもりだったのだろう。


「モア! テメェなにをベラベラ喋ってやがる!!」

 

「いやだって! 情報吐かなかったらなにされるのかわかんないじゃないっスか! モアはイヤっスよ、こんな辺鄙へんぴな場所で知らない相手にケンカ売って負けて殺されましたってなるの!! モアまだ14歳なんスよ!?」

 

「だからってそう簡単に吐く馬鹿がいるかよ!! テメェはそれでも天災セレスターか!? 世界を救う使命者の自覚あンのか!?」

 

「今まさに敵側に寝返ってるエリスさんがいるのにそんなモンあるワケないじゃないっスか!!」


 ワーワーと騒ぎ始める二人。

 そうだった。いつもの変態的な言動で忘れそうになるけど、こんなでもエリスは天災セレスターだったな。

 

「っていうか一番の問題は口を割ったモアじゃなくて、ロックさんの隣に平然と立っているエリス先輩じゃないっスか!?」

 

「……? わたくし……???」

 

「テメェ、なんで『自分に問題があると?』みてェな顔してやがンだ!!」


 はて? と首を傾げて惚けるエリスに対してバリオスが吠える。

 そうか。二人はなんでここにエリスがいるのかを知らないんだ。正直あまり話したくはないんだけど……仕方がない。


「……わかった。じゃあ何故ここにエリスがいるのか、そしてキミたち天災セレスターが気付いての通り、どうして厄災ディザスターがいるのかについて話そう。だけどその代わり、キミたちについての話も聞かせてくれないか?」


 俺の提案に対して、これ以上無駄に言い争うのは無駄だと判断したのか、バリオスは舌打ちまじりに頷いた。

 


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 それから二人に話を伺うと、今から約1ヶ月前に天災セレスターのみで集まる会議が行われたみたいだ。

 10人中4人しか集まらなかったとの事でバリオスが嘆いていたが……まぁ、エリスみたいなヤツが多いのだろう。

 

 俺でさえ手に負えないのだ。いくら世界を救う力を持つとされる天災セレスターであっても問題児たちを纏めるのはそう簡単な話ではない。


 ──と、それは別にいい。


 天災セレスターたちが集まり、封印が解除された厄災ディザスターについてどうするかを話し合うのは、世界を救う者の使命だ。

 だからそれは全然いい。むしろ世界平和のために頑張って欲しいとさえ思う……だが。


「……それで、なんで俺が封絶ノ王エグゾードになるんだよ?」


 ──その会議の中で、何故か俺のことを「封絶ノ王エグゾードじゃね?」と抜かしたヤツがいるらしい。

 それでこの二人はいてもたってもいられずに俺を探しに来たのだと言う。

 誰だそんなこと言い出したヤツ。普通に考えて俺が封絶ノ王エグゾードなんてありえないだろ。


「そうじゃッ! ロックが封絶ノ王エグゾードなんじゃとしたら、我ら厄災ディザスターが気づかない筈がなかろうが!!」


 勘違いの挙げ句攻撃までされたのだ。

 いくら世界を救う使命があるからってこれは許せん! ……と思って二人に怒ろうとしたら、俺よりも先にアイザが怒りの声をあげた。

 そうだ、いいぞアイザ。もっと言ってやって!


「……マジでこの餓鬼が厄災ディザスターなのかよ。ってことは、ペロコって呼ばれてるあそこの餓鬼も?」


 バリオスの視線が、俺の背後で蝶々と戯れるペロコに向かう。


「そうだよ。ペロコも歴とした厄災ディザスターだ。聞いたことないか? 『終焉ヲ齎ス獄炎竜アイザ・ジ・エンド』、『魔獣神王ジゴクノバンケン』という名前を」

 

「ええっ!? まさかそこの女の子二人が!?」


 モアは信じられないといった様子で声をあげた。

 今はどこからどうみても美少女にしか見えないから驚くのも無理はない。


「まずいっスよバリオス先輩! 終焉ヲ齎ス獄炎竜アイザ・ジ・エンド魔獣神王ジゴクノバンケンと言えば厄災ディザスターの中でもトップクラスに強い個体じゃないっスか! こんなの勝てるワケないっスよ!! すみませんロックさんケンカ売っちゃって! 先輩のことは何してもいいんでモアだけは見逃してほしいっス!!」


「ごめんなさいごめんなさい!!」と号泣しながら頭を下げるモア。

 おい天災セレスターよ、それでいいのか……。




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※続きは12時3分に更新します。

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