第24話 解錠師、追放したAランクパーティと再会する。


 

 そういうワケで、エリスが俺たちに着いてくることになった。


 アイザは大反対しているけど、個人的には近くにいてもらった方が助かる。もしこのまま帰国させて、俺たちの居場所を告げ口されても困るしね。


 それに、アイザは反対しているけど、ペロコはそうじゃないみたいだ。


「わんっ! わんわんっ!」

 

「ああっ!? ちょっ、やめなさいっ! ああっ♡ わたくしの胸で、遊ばないでぇ♡」


 歩くたびに揺れる胸をオモチャか何かだと思いこんでいるのか、ペロコがエリスの胸を使って遊んでいた。


「よかったなペロコ! 新しいオモチャができて!」

 

「わんっ!」

 

「……アイザさん。もしかしなくても、ロックさんって以外にアブナイ人なんですか?」

 

「ああ、ロックは見た目に反してだいぶイッておるぞ」


 喜ぶペロコを可愛がる他所で、コソコソと話し込むアイザとグレン。言っとくけど、ちゃんと聞こえているからね? 色々とおかしいのは否定しないけどさ。


 そんなやり取りをしながら街を目指す俺たち。

 しばらく歩いていると、前方からこちらに向かってくる人影が見えた。


「あれ? なんか向こうからこっちに向かってきてないか?」

 

「ん〜? ……ホントじゃな。それも一人じゃなく数人おるぞ」


 アイザは目元を手で隠し、【部分変化】で「竜の目」に変化させる。


 視力が上昇したアイザが、此方に向かってくるのがどんな人なのかを軽く説明する。


「う〜ん……なんというか、全体的にアホっぽいな」

 

「アホっぽい?」

 

「うむ。具体的に言うと、『優秀な人材を自己中心的な理由で追放しそうな顔』といえばいいのか」


 それはまた随分と具体的な例えだな……。

 これを言えば、「自分のことを優秀だ」と言っているようでイヤだけど、身に覚えがあるんだよな。


 そんなことを考えていると、俺たちの元に5人の冒険者が現れた。

 

 ……ああ、やっぱり身に覚えがあった。


 


「ハァ、ハァ……! ふへ、ふヘヘヘ……! ついに、ついに見つけたぜぇ、役立たずのロック様よォ!!」

 

「……ガレス」


 


 息を切らしながら現れたのは、俺をパーティから追放したガレスだった。後ろには、ガレスと同じく息を切らしているパーティメンバーたちがいる。

 

 一人だけ知らない女性がいるけど、たぶんあの人が俺の後釜なのだろう。どうだっていいけど。


「ずっと探してたんだぜぇ、テメェのことをよォ〜!」

 

「そうなのか。俺はお前の顔なんか二度と見たくなかったけどな」


 吐き捨てるように言うと、ガレスはあからさまに苛立ったような表情を浮かべる。


 すると後ろから「舐めてんじゃねーぞ!」「ロックのくせに!」「調子にのんな!」といった声が投げかけられてくる。

 

 はぁ……本当イヤになる。

 二度と会わないようにと王都を出ていったのに、なんで会いに来るんだよコイツら。

 

「……それで。何しに来たんだ? 俺はお前の顔なんて、二度と見たくなかったんだが」

 

「あァ!? そんなの俺も一緒だよ!! けどなぁ、国王がどうしてもテメェを連れ戻せってうるせェんだよ!! だからよロック、さっさと戻ってこい。そして国王に謝れ! 『ぜんぶ僕が悪かったですぅ〜!』って、な? そしたら俺たちもお前のこと許してやるから、な?」

 

「………………?」


 

 ? ? ?

 

 コイツはいったい、何を言ってるんだ……?



「……なぁロック。コイツはいったい何を言っておるのじゃ?」

 

 アイザも俺と同じ考えをしていた。すまん、俺に聞かれてもわからないんだ。


 というより、この場にいる全員、話についていけてないと思う。


「お姉様、この方たちは恐らく──」

 

「……ああ。そう言えばあのとき、処刑されそうになっていましたわね、この下民ども」


 突然あらわれて意味不明のことを言い出すガレス。困惑する俺たちとは裏腹に、どうやらエリスは事情を知っているらしい。


「ロック様。コイツらは王選冒険者であるロック様を追放した罪で処刑されそうになっていたんですのよ。まぁ結局『ロック様を捕まえよう』って話でうやむやになりましたが」

 

「処刑?」

 

「チッ、おいそこの金髪デカパイ女!! 余計なこと抜かしてんじゃねーぞ!!」


 吠えるガレスに、エリスは手にしていた聖剣を投げつける。柄頭がひたいにぶち当たり、ガレスはその場でうずくまった。


「があああああッ!! いてええええええええッ!!」

 

「「「が、ガレスーッ!!」」」


 

「……それで、処刑ってどういうことなんだ?」

 

「どうもこうもありませんわ。王選冒険者かつ解錠師という、世界的に見ても特異中の特異、『特殊能力者ユニークホルダー』を自分の意思で、王に無断で追放した結果、アルマ国王から死刑を言い渡されているのですわ」


 エリスから話を聞いて、ようやく話が理解できた。

 

 アルマ国王にバレて処刑されそうになり、慌てて俺を連れ戻しに来たというワケか。


 まぁ、戻るワケないんですけどね。




────────────────────

※こちらも短いので、18時3分にもう一話更新します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る