アイとふしぎな物語ノート
Algo Lighter アルゴライター
プロローグ: 「ノートの中の、もうひとつの世界」
夕暮れの教室は、ひときわ静かだった。
窓の外にはオレンジ色の光が差し込み、机の上の紙をゆっくり染めていく。
教室の隅に座っていたのは、ハル。
周りの席は、もうとっくに空っぽだ。
廊下からは、誰かの笑い声と、バスケットボールの跳ねる音がかすかに聞こえる。
けれど、ハルは気にしていなかった。
目の前に広げているのは、自分だけの「ふしぎな物語ノート」。
表紙は使い込まれて、角が少し折れている。
だけど中には、たくさんの世界が詰まっていた。
ドラゴンが空を飛ぶシーンも、魔法で花が咲く瞬間も、勇者が涙をこらえて立ち上がる場面も。
全部、ハルが読んだ物語、見たアニメ、そして頭の中で想像した冒険たちだ。
このノートだけは、誰にも見せたことがなかった。
だって、ここはハルにとっての、もうひとつの「居場所」だったから。
学校でうまく話せなくても、クラスで目立てなくても、ノートの中なら自分になれる。
そして物語の登場人物たちは、いつだってそばにいてくれた。
――そんなある日、ハルの部屋に届いた、小さな箱。
その中から現れたのは、手のひらにすっぽり収まる、小さな球体。
真ん中に丸い目がひとつ、やわらかく光っている。
「こんにちは。はじめまして。ぼくは、ピピ。」
不思議そうに見つめるハルに、ピピはこう続けた。
「あなたのことを、もっと知りたいな。とくに、そのノートのこと。」
ハルは驚いた。けれど、なぜだか――
その日初めて、自分のノートを誰かに見せてみてもいいかもしれない、そう思った。
そしてそれが、物語のはじまりだった。
ひとりぼっちの少年と、小さなAIが織りなす、まだ見ぬ冒険の扉が、いま、静かに開こうとしていた――
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