極東支部の決戦

 ルロナたちは重々しい扉を開けた。

 そこは魔王軍拠点極東支部の中央。司令部が設置されている場所だ。中には、映像が映し出されている謎の機械と、その前に魔物が三人いた。

 何かの機械に向き合っていた白衣のようなものを身につけた魔物二体が彼らに気付き、銃と思われるものを向ける。どうやら、魔王軍は現代でも扱われるような兵器を作り出すだけの技術力があるようだ。それに加え、この世界には魔法もある。厄介そうだ。ルロナが改めてそう認識したとき、こちらに銃を向けている二体の間に立っていた魔物がゆっくりとこちらを振り向いた。

「やあ、ご客人。歓迎はしない。なぜならここはあなたがたがいるべきところではないから」

 おそらく、この拠点のリーダーだろう。彼は他二体とは違い、武器という武器を持っていない。しかし、現代でよく見るYシャツとズボンのような物を身に着けており、顔や体つきから、只者ではない雰囲気を感じ取った。

「自己紹介をしよう。私はメイキ。この拠点のリーダーだ。なぜなら、それだけの実力があるから」

 メイキと名乗ったその魔物は左手をズボンの中へと忍ばせた。

「歓迎はしないが、帰す気もない。なぜなら、特異点冒険者をここで殺せるかもしれないからだ」

 メイキはズボンから何かの装置を取り出した。そして、その装置のスイッチを押した。

 ファレナが呟く。

「この感じ…、魔法結界ね。多分だけど、この建物とその周辺を覆ってる」

 すると、先程入ってきた扉から、多数の魔物たちが部屋へと入ってきた。四人は囲まれてしまった。

 ケイスはスキルを発動した。

「スキル発動。観測者」

 ケイスのスキル『観測者』は、相手の全てを見通すことのできる力だ。体の構造や表面的な思考はもちろん、読まれている本人ですら気がつけないような、深層心理、無意識の領域までも。

 ケイスが口を開く。

「この部屋の天井だけ、他のところよりも薄いみたい」

 それを聞いたルロナが、魔物たちに聞こえないように話す。

「ファレナさん。ここを一気に破壊してください」

「え?でもそんなことしたら…」

「大丈夫です。それよりも、この狭い空間で戦うほうが、より危険です」

 ファレナは心配そうな顔をしながらも、杖を高く振り上げ唱えた。それを阻止しようと、白衣を着た魔物は銃による攻撃を放つが、ルロナが素手で叩き落した。

「ボンバー!!」

 次の瞬間、辺りは爆風で煙と巻き上がった砂埃に包まれた。ルロナはファレナを抱え、穴の開いた天井から外へでて、ラズとケイスもそれに続いた。

「いい判断だ。だが、まだ終わりではないぞ」

 ラズが言った。それに応えるように、煙の中から一人の魔物が現れた。

「私以外の魔物は戦闘不能だ。なぜなら、奴らが弱いから」

 メイキは革製の手袋を装着し、構えた。

「ここからが本番だ。なぜなら、私はまだ戦えるから」


 ケイスとファレナはルロナとラズの後ろに隠れた。

 ルロナとメイキはしばらく睨めあった後、凄まじい力で地面を蹴り上げ、衝突した。

「!?」

 ルロナが驚いたのは、想像以上にメイキのパワーが強かったからだ。

 純粋なパワーではほぼ互角。あとは、格闘技術。互いに押し合い、間合いをとる。メイキは前傾姿勢で上半身を左右へ動かし、ルロナの動きを観察している。

 ルロナはスキルを発動することにした。

「スキル発動。硬化&速度増加」

(さあ、これでどこまでついてこれるか)

 ルロナはメイキへと急激に距離を詰め、硬化した拳を叩き込む。

「ぐっ!」

 予想外の行動にメイキは怯み、一瞬の隙が生じた。そこに、一筋の光の矢が飛んでくる。それはメイキの腹を貫き、メイキは倒れ込んだ。

「あまり一人で実力の知れない者に接近するものでは無い」

 ラズから注意を受ける。その横で、メイキは笑みを浮かべていた。

「終わりじゃない。なぜなら、魔王軍には、私以上の実力者がいるから」

 その笑みを崩すように、一本のナイフが飛んだ。ルロナが王都で新調した武器だ。暗殺を得意とするルロナにとって、軽く、その上で殺傷能力の高いナイフはとても扱いやすい。

 メイキの身体が、ナイフで貫かれた部分から崩壊していく。

「やれやれ、思っていたよりも時間がかかってしまったな」

 ラズはナイフを拾い上げ、ルロナに手渡しながら言った。それにファレナが続ける。

「他の一人たちは大丈夫でしょうか」

「分からん。だから、私たちの方から向かおう」

「そうですね」


 気付くと、魔法結界は消え、程よく雲の覆う空が見えた。四人は、そこから最寄りの、南東拠点へ向かうことにした。

 魔王軍への反撃は、まだ始まったばかりだ。

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