第4話

その後私は行動に移した。

塾に通っている同じ学校の子に話を聞いてみたり、病院の婦人科の前を通ってみたり。

後は翔生さんの家庭教師を続けている。


「沙莉ちゃん本当は俺要らんくても勉強できるやん。」

翔生さんからはそんな風に言われるけど、私は笑みを浮かべながら言い訳をする。

「翔生さんの教え方が上手いからですよ。」

「そ、そう言われると悪い気せえへんけど。」

あからさまに顔を赤くする翔生さんを見て、余計に心が痛くなる気がする。

でも、私はただ確かな証拠が欲しい。

私はゆっくり翔生さんの手に自分の手を重ねた。

「さ、沙莉ちゃん?」

「翔生さん、私不安なんです。ママが死んじゃってひとりぼっちになるんじゃないかって。」

本心と嘘との混ざった感情を織り交ぜながら私は言葉を並べた。

「パパも居ないし、他に頼る人が居なくて。」

「沙莉ちゃん・・・。」

「だから、翔生さんといられる時間は少し甘えてもいいですか?」

上目遣いで頼めば、翔生さんは重ねた手を握り返してくれた。

ごめんなさい、翔生さん。

こんな汚い事をしようとしている私の手を握らせてしまって。

そんな事を思いながら、私は翔生さんの手をまた握り返した。



病室を開けると、ママは寝ていた。

音を立てないように座るとママの眉が苦しそうに歪んだ。

「ごめんなさい・・・豪君・・・沙莉・・・。」

医者からママはあと半年位だと話をされた。

ママは私を産んでから、私を産まなかったら、あいつとは会わないで居られたのかもしれない。

最近そう考えてしまう。

「私、いらない子だった?」

ボソッと呟いた言葉にママがゆっくりと目を開けた。

「沙莉、来てくれてたのね。」

「うん。ママ、大丈夫?」

「ええ。私は大丈夫。この位罰を受けないと・・・。」

ご飯を食べれて無いのかママはどんどん痩せ細っていて、頬もこけ始めている。

「ママ、もう罰とか言わないで。お医者さんも順調だって言ってたから。」

「沙莉が豪君に似てくれて、本当に良かった。ちゃんと優しい子に育ってくれて、私に似ないで良かった・・・。」

「ママ・・・。」

「沙莉はちゃんと正しい道を、歩んでほしいな・・・。」

ママはそう言ってまたゆっくり目を閉じて寝息を立てた。

「・・・誰がこんなことさせてるのよ。」

ぼそっと呟いた言葉は、病室にただ響いただけだった。














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