予知か予言かお告げか加護か

 春子は、自分の身体に新しい命が宿ったことを知ることができた。そういう能力を有していた。

 あ、いま受精した、となぜか理解する。

 お腹に入った、というか、産まれます、という感覚。


 正確に言うと、受精は射精と同時に成立するものではないし、受精卵が着床するまでの時間もあるから理解したそのときにはまだ受精していない、はず。

 受精しているのであれば、生じた電位変化をキャッチしているのだろうと考えることもできるけれど。

 同じ行為をしても、それ以外では得られなかった感覚。

 だから、予知や予言の類なのだろう。


 つまり、春子には予知能力があるのだ!


 一回目は、

「なんだ、いまの感覚は?」

 だった。

 妊娠しました!という確信が生じること自体が謎だった。けれど、妊娠していたし、出産した。

 二回目で同じ感覚を得た時、この時は自信を持った。そして、やはり妊娠していたし、出産した。


 さらに、こうして生まれた二人は、それぞれプラスアルファの逸話を持っている。


 一人目の話。

 春子には、なかなか子宝に恵まれない友人がいた。妊娠はするのだが流れてしまう。それが片手ほどもあって、夫婦ともにかなりのダメージを受けていたらしい。

 春子が妊娠したことをご主人の方に伝えたとき、奥さんへは知らさずにいてほしいと頼まれた理由がそれだった。

 春子たちは、おなかに手を当てて言葉をかけた。

「お友達を連れてきてあげてね」

 それからおよそ1年後、友人のところにも赤ちゃんが来た。


 二人目の話。

 家族みんなで名前を考えていた。その前提はあったけれど。ある日突然、春子に名前が降りてきた。いやいやながら掃除機をかけていたときに。いままで、まったく思いついていなかった名前。

 姓名判断で良くない画数だと嫌だなと思って調べると、良い。もう、決定。

 名は体を現すというけれど、そんな感じ。すてきな名前ね、と褒められることが多いのは、本人のイメージと乖離していないからだろう。

 本人も、自分の名前が大好き。


 ちなみに、春子はあまり自分の名前は好きではない。

 画数が良くない。姓名判断、当たりすぎ。

 そして、誕生日で占っても春子の運勢は良くない。四柱生命も良くない。

 そのうえ、内容がすべて一致する・・・。占いを信じる理由はここにある。というか、信じない理由がない。


 さて。この二人目の子の知人に、霊感がある、という方がいる。エピソードを聞くと本物っぽい人。

 この方から、言われたそうな。

「あなたは守られているし自分でもそれをわかっているから、多少悩むことがあっても大丈夫」

 この子の目下の悩みは、母親である春子のこと。

 うーむ・・・。


 春子は春子で、常々頭を巡らせている。

 産んだのは私なんですよ。降りてきたといえども、名前を付けたのも私。私の運の悪さと比べるとこの子の強運は際立っている(ように見える)。この子の強運は私の不運の上に成り立っているのでは・・・?

 いや、この子が常に不運にさらされていたら。それは私の幸運とはならないから、実は私も幸運なのか?


 こうして考えると、一人目のエピソードにはどこか責任感を感じるし、二人目のエピソードにはとても他力本願な感じを受ける。産まれてからの性格と同じ。上の子下の子あるあるかと思っていたけれど、それ以前のものなのだろうか。


 まあ、この二回目の妊娠は疑うことがなかったから、早めに出産準備ができた。その意味では能力が役に立った一件だった。名付けにおいては、その能力はすべて子供のために発動したのだろうけれど。


 だが、春子自身が人生で最もその予知能力が発揮された、と思っていることはほかにあるのだった・・・。

 




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