第22話 鍛えるべきは読心力
☆☆☆
「...ねえ、渉くん。君のせいなんだから、早く慰めてあげてよ。」
「いやいやいや、俺のせいすか?どう考えても自業自得...痛たたた!ちょ、殴らないで!?」
放課後、俺と実先輩は、拗ねている咲月先輩の対処に追われていた。先輩が朝のHRに遅刻したのは、どう考えても自業自得だと思うのだが、なぜだか俺に対して怒っている様子だった。
「ほら、君が謝らないとだめっぱいしさ。ね、ここはひとつパッと謝っちゃってさ、終わらせようよ、ね?」
咲月先輩に聞こえないように、そんなことを囁いてくる実先輩。悪魔の声ってやつだ。しかも天使の声は不在。こうして冤罪は増えていくんだなあ。
そんなことを思いながら、俺はため息をついて、咲月先輩の隣に座る。どうしたものかと思ったが、とりあえず先輩に機嫌を直してもらわないといけないので、やさしくしてみよう。
「あー...その、すみませんでした?」
先輩の頭をなでながら、そういう。先輩は一瞬すごくびっくりした顔をしたが、すぐに元の顔に戻った。
「...それは、何に対して?」
「え?」
「何に対して謝ってるの?」
「えーと、先輩を朝のHRに遅刻させてしまったこと...?」
そういうと、なぜか先輩はふくれっ面になって、俺のことをぽかぽかと殴ってきた。
「痛たたた!?ちょ、なんで殴るんですか!?」
「なんで私が怒ってるのか、わかってないから」
「え、遅刻したことに腹を立ててるんじゃないんですか?」
「そんなわけないでしょ」
先輩はそういって、俺を睨みつけてくる。やばい、だいぶご立腹だ。だが、どうすればいいのかがわからん...教えて誰か!とりあえず俺は、その場から逃げ出して、実先輩のもとへ。
「いやあ、まさか君がそこまで女心がわからない人だったとは思わなかったよ。本当に遅刻させたことを怒ってると思ってたの?」
「だって、それくらいしか心当たりが...」
「まじかこいつ」
実先輩はこっちを変な目で見てきた。
「そんな言うなら教えてくださいよ、女心。先輩はなんで怒ってるのかわかってるんでしょう?」
「それは君が気付くべきだからなー...」
「そういわれても...はあ、わかりました。それならこっちにも考えがあります。」
「考え?」
俺はその場から立ち上がり、また咲月先輩の隣に...座らず、土下座した。
「えちょ、渉く...!」
実先輩が何か言いたげな表情をしていたが、気にせず続けた。
「先輩がどうして怒っているか、僕にはわかりません!だから先輩、教えてください!先輩のこと、もっとよく知りたいんです!」
それは、まぎれもなく、俺の本心だった。
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