第9話 新しい朝がきた
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カーテンの隙間から朝日が部屋に差し込み、目が覚める。ゆっくりと起き上がり、カーテンを開けた。
朝日を浴びながら、背伸びをする。今日もいい天気だなぁ、こんな日はいい一日に.....。
「.....ならなそうだよなぁ、あの部活にいたら。」
俺はガックシと崩れ、ため息をつく。成り行きで、文化部とかいう、得体の知れない部活動に入ってしまった俺。ものの見事に釣られた様は、はたから見たらさぞ笑いものだっただろう。
今のところ、大きな不満があるわけではない。ただ、その得体の知れなさが、怖い。だって一方的にこっちの個人情報を色々と調べあげて、あげく初対面で人をさらう連中だぜ?これで恐怖するなというほうが難しい。
俺は頭を抱えながら、1階に降りていく。リビングからは、何やら話し声が聞こえてきた。変だな、この時間はいつも、母さんしか起きていないはずだが.....?
おそるおそるリビングの扉を開けてみると、そこには
「あら渉、今日は少し早いんじゃない?」
母さんと
「ですね、いつもより5分早い」
「僕たちのために早起きしてくれたのかな?それなら嬉しいなぁ。」
咲月先輩と実先輩、が.....?
俺は咄嗟にリビングの扉を閉めた。なにかの見間違いであってほしい、そういう思いを込めてのことだった。
だっておかしいだろ?出会って1日の先輩達が家にいるはずがないんだから。きっとまだ寝ぼけているのだろう。
俺は目をこすって、またリビングの扉を開ける。その先には、母さん.....
「ちょっと、なんで閉めるの。」
「寝ぼけてるのかな?可愛いねぇ。」
と、やっぱり咲月先輩と実先輩がいる。
「なんでいる!?!?」
俺は思わず叫んでしまった。近所の皆さんごめんなさい、許してください。こんなことが目の前で起きたら、誰だって叫ぶにきまってる。
「なんでって、朝練のためだけど」
「昨日、朝練の時間伝えてなかったから、起きて来ないんじゃないかって思って。」
「だからって人んち乗り込んでくるやつがいるか!心臓に悪いなぁもう!」
俺は溜息をつきながらそういう。
「こら、先輩に向かってそんな態度と言葉遣いはダメでしょ。」
母さんが俺をそう注意するが、頭に入ってこない。
「なら、俺はこうして起きてますから、お2人は学校に行かれては?」
「何言ってるの、一緒に登校するんだよ。」
「2人より3人!皆で登校した方が楽しいよ!」
咲月先輩は感情が読み取りにくい顔で、実先輩は笑顔でそう言った。俺はこれ以上言っても無駄と判断した。
「はぁ、そうですか。今から着替えと飯食うんで、時間かかりますよ?」
「そこは大丈夫、まだ全然時間あるし」
「そそ、ゆっくりでいいからね」
俺は軽く頷き、リビングを離れて制服に着替える。そのへんは常識あるのか、着替えに着いてくる気配はなかった。
てかマジで、なんでうちを知ってるんだろうか。あぁいや、あの二人のことだから、住所くらいはバレててもしかたないかなと思うけど.....いやこの考えも十分おかしいんだけどね。
俺はその場でうずくまり、頭を抱えるのだった。
☆☆☆
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