第9話 新しい朝がきた

☆☆☆

カーテンの隙間から朝日が部屋に差し込み、目が覚める。ゆっくりと起き上がり、カーテンを開けた。


朝日を浴びながら、背伸びをする。今日もいい天気だなぁ、こんな日はいい一日に.....。


「.....ならなそうだよなぁ、あの部活にいたら。」


俺はガックシと崩れ、ため息をつく。成り行きで、文化部とかいう、得体の知れない部活動に入ってしまった俺。ものの見事に釣られた様は、はたから見たらさぞ笑いものだっただろう。


今のところ、大きな不満があるわけではない。ただ、その得体の知れなさが、怖い。だって一方的にこっちの個人情報を色々と調べあげて、あげく初対面で人をさらう連中だぜ?これで恐怖するなというほうが難しい。


俺は頭を抱えながら、1階に降りていく。リビングからは、何やら話し声が聞こえてきた。変だな、この時間はいつも、母さんしか起きていないはずだが.....?


おそるおそるリビングの扉を開けてみると、そこには


「あら渉、今日は少し早いんじゃない?」


母さんと


「ですね、いつもより5分早い」


「僕たちのために早起きしてくれたのかな?それなら嬉しいなぁ。」


咲月先輩と実先輩、が.....?


俺は咄嗟にリビングの扉を閉めた。なにかの見間違いであってほしい、そういう思いを込めてのことだった。


だっておかしいだろ?出会って1日の先輩達が家にいるはずがないんだから。きっとまだ寝ぼけているのだろう。


俺は目をこすって、またリビングの扉を開ける。その先には、母さん.....


「ちょっと、なんで閉めるの。」


「寝ぼけてるのかな?可愛いねぇ。」


と、やっぱり咲月先輩と実先輩がいる。


「なんでいる!?!?」


俺は思わず叫んでしまった。近所の皆さんごめんなさい、許してください。こんなことが目の前で起きたら、誰だって叫ぶにきまってる。


「なんでって、朝練のためだけど」


「昨日、朝練の時間伝えてなかったから、起きて来ないんじゃないかって思って。」


「だからって人んち乗り込んでくるやつがいるか!心臓に悪いなぁもう!」


俺は溜息をつきながらそういう。


「こら、先輩に向かってそんな態度と言葉遣いはダメでしょ。」


母さんが俺をそう注意するが、頭に入ってこない。


「なら、俺はこうして起きてますから、お2人は学校に行かれては?」


「何言ってるの、一緒に登校するんだよ。」


「2人より3人!皆で登校した方が楽しいよ!」


咲月先輩は感情が読み取りにくい顔で、実先輩は笑顔でそう言った。俺はこれ以上言っても無駄と判断した。


「はぁ、そうですか。今から着替えと飯食うんで、時間かかりますよ?」


「そこは大丈夫、まだ全然時間あるし」


「そそ、ゆっくりでいいからね」


俺は軽く頷き、リビングを離れて制服に着替える。そのへんは常識あるのか、着替えに着いてくる気配はなかった。


てかマジで、なんでうちを知ってるんだろうか。あぁいや、あの二人のことだから、住所くらいはバレててもしかたないかなと思うけど.....いやこの考えも十分おかしいんだけどね。


俺はその場でうずくまり、頭を抱えるのだった。


☆☆☆

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