第10話 割とちゃんと犯罪
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着替えを終わらせ、そそくさと朝飯を食べる。2人の先輩は、こちらを笑顔でジロジロと眺めてくる。
一々突っ込んでるとキリがないので、無視を決め込む。気にしたら負け、反応したら負けなのだ。
朝飯を終えた俺は、簡単に身だしなみを整え、先輩達の元へ。
「お待たせしました、行きましょうか。」
「うむ。いやぁ、中々に楽しめたよ。」
「いいねぇ、渉くんの生活鑑賞会。またやろうね!」
「いや.....はぁ、もういいや。ほら、さっさと行きますよ!朝練なんでしょ!」
いろいろと言いたいことはあったが、1度突っ込むのをやめた手前、掘り返すのが面倒になった。俺は先輩達を急かし、母さんのほうをちらりと見る。
「ふふふ、行ってらっしゃい♪」
ダメだこの人、今の状況を楽しんでやがる。分かってんのか?息子の先輩を名乗る2人組が、家にズカズカと乗り込んでるんだぞ?
俺は「いってきます」と素っ気なく返し、先輩達とともに家を出るのだった。
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「あー.....やっぱり気になるんで聞いときますけど、なんで俺の家知ってるんですか。ネットにあげた覚えはありませんよ。」
「んー?あー、それね。ネットから拾った訳じゃないから安心して。」
「いや安心できませんって。どこから漏れたんですか、うちの住所。」
「大丈夫、漏れてもいないよ。ちゃんと厳重に保管されてたし、電子ロックだったから、外部の人にそう知られたりはしないと思う。」
「.....ちょっと待った、いったい何の話です?」
俺は歩を止めて聞いた。
「何って、住所をどこで知り得たかでしょ?調べるの苦労したんだよ?今の職員室って、はいるの結構苦労するんだから。」
「待って?」
「そうそう!電子ロックの解錠とか、なかなか面倒だったね。まぁでも、あれぐらいなら何とかなるかな。」
「待って!?」
つまりこの人たち、職員室にこっそり入って、俺の個人情報を見たの!?普通に犯罪ですけど!?
「え、えらいこっちゃ、警察呼ばなきゃ.....」
「待てい、そうはさせるか。」
「ちょ、返して下さい!今から犯罪者2名を警察に突き出すんですよ!」
「悪いけど、そうはさせないよ」
スマホを取り出して警察に電話をかけようとすると、スマホを奪われた。返してもらおうと手を伸ばすが、全然掴めない。ひらりひらりと避けられる。手馴れてやがるぞこいつら!
「そもそも、なんでそんなことをしたんですか!」
「だって普通に聞いても教えてくれないし」
「当たり前でしょう!?個人情報大事!」
「だからこうするしかないって思ってね。どこぞの職員室から連絡網盗んで63回電話かけるやつよりかはマシだと思うな?」
「何それ怖い、そんなヤツいてたまるかよ。てかいい加減スマホ返して下さいよ!?」
「嫌だね、君返したら通報するもん」
「それ逃げろ、やれ逃げろ~」
「ちょ、待てやコラー!」
こうして俺は、朝から先輩2人と追いかけっこをする羽目になるのだった。
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