第10話 割とちゃんと犯罪

☆☆☆


着替えを終わらせ、そそくさと朝飯を食べる。2人の先輩は、こちらを笑顔でジロジロと眺めてくる。


一々突っ込んでるとキリがないので、無視を決め込む。気にしたら負け、反応したら負けなのだ。


朝飯を終えた俺は、簡単に身だしなみを整え、先輩達の元へ。


「お待たせしました、行きましょうか。」


「うむ。いやぁ、中々に楽しめたよ。」


「いいねぇ、渉くんの生活鑑賞会。またやろうね!」


「いや.....はぁ、もういいや。ほら、さっさと行きますよ!朝練なんでしょ!」


いろいろと言いたいことはあったが、1度突っ込むのをやめた手前、掘り返すのが面倒になった。俺は先輩達を急かし、母さんのほうをちらりと見る。


「ふふふ、行ってらっしゃい♪」


ダメだこの人、今の状況を楽しんでやがる。分かってんのか?息子の先輩を名乗る2人組が、家にズカズカと乗り込んでるんだぞ?


俺は「いってきます」と素っ気なく返し、先輩達とともに家を出るのだった。


☆☆☆


「あー.....やっぱり気になるんで聞いときますけど、なんで俺の家知ってるんですか。ネットにあげた覚えはありませんよ。」


「んー?あー、それね。ネットから拾った訳じゃないから安心して。」


「いや安心できませんって。どこから漏れたんですか、うちの住所。」


「大丈夫、漏れてもいないよ。ちゃんと厳重に保管されてたし、電子ロックだったから、外部の人にそう知られたりはしないと思う。」


「.....ちょっと待った、いったい何の話です?」


俺は歩を止めて聞いた。


「何って、住所をどこで知り得たかでしょ?調べるの苦労したんだよ?今の職員室って、はいるの結構苦労するんだから。」


「待って?」


「そうそう!電子ロックの解錠とか、なかなか面倒だったね。まぁでも、あれぐらいなら何とかなるかな。」


「待って!?」


つまりこの人たち、職員室にこっそり入って、俺の個人情報を見たの!?普通に犯罪ですけど!?


「え、えらいこっちゃ、警察呼ばなきゃ.....」


「待てい、そうはさせるか。」


「ちょ、返して下さい!今から犯罪者2名を警察に突き出すんですよ!」


「悪いけど、そうはさせないよ」


スマホを取り出して警察に電話をかけようとすると、スマホを奪われた。返してもらおうと手を伸ばすが、全然掴めない。ひらりひらりと避けられる。手馴れてやがるぞこいつら!


「そもそも、なんでそんなことをしたんですか!」


「だって普通に聞いても教えてくれないし」


「当たり前でしょう!?個人情報大事!」


「だからこうするしかないって思ってね。どこぞの職員室から連絡網盗んで63回電話かけるやつよりかはマシだと思うな?」


「何それ怖い、そんなヤツいてたまるかよ。てかいい加減スマホ返して下さいよ!?」


「嫌だね、君返したら通報するもん」


「それ逃げろ、やれ逃げろ~」


「ちょ、待てやコラー!」


こうして俺は、朝から先輩2人と追いかけっこをする羽目になるのだった。


☆☆☆

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