8話 青春の日々

なんども放課後を過ごすうち、

部活生のかけ声が耳によくなじむようになった。


「ヨウメイーエッオエッオ」


校庭から響いて来るのはサッカー部の声だ。


なんでも10年に1人の逸材が入部したそうで、

とても盛り上がっているらしい。


「メェーン、メェーン」


小気味良い打撃音と一緒に聞えたのは剣道部の声だ。


最近知ったのだが、

陽明の女子剣道部はすこぶる強いらしい。


しばらくすると、離れた教室から

吹奏楽部の練習が聞こえてくる。


なんていう楽器だろう。

フルート?


清々しいカンジのメロディーだった。


イチローは耳に入ってくるたくさんの音を聞きながら、

英語の予習をはじめた。


いつのまにか、

自分の将来について考えるようになっていた。


ちゃんと勉強を頑張って、

大学受験をしてみたい。



<よっす>


ラウテルからレンラクがきた。


「おっす」


<ベンキョーしてんの?>


「そう」


<なん・・・だと・・・?>


やっていたページを

スマホで撮影して送信してやる。


<優等生じゃん!>


「放課後はみんな勉強したり、部活したりだから、

僕だけテキトーにゲームってのは、ちょっと難しいんだよなぁ」


<きさまはぁーーーー!!

そんなことだからぁいつまでも童貞なのだぁ!

でも、そんなイチローも好き♡>


「はいはい」


教室に入る光に橙色がまじってきた。



この時間帯の空には、

世界の真実が隠されているような気がする。


それはきっと、知ればナルホドと思えるような、

当たり前だけど大切な真実なのだ。



まだ昼の気配を残す空をカメラに収めると、

ラウテルに送ってやった。


<キレイだねぇ>


<うん>


<そういえば、もうすぐ終わるんじゃない?>


残り少なくなった窓ガラスに目をやる。


だんだんと、

終わりが近付いていた。


「うん。あっという間だったなぁ」


<じゃあさ、終わったらご褒美あげるお>


「え、なにくれるの?」


<そ・れ・は・あ・た・し・fuuuuuuu!!>


コイツはいつもバカばっかり。


でも、

ありがとうと伝えたい。


「ありがとラウテル」


<なにが?>


「これまでのコトぜんぶ」


<ちょっ。

そんなこと言っても、見せてあげないんだからね!

やっぱり、あんただけには見せてあげるぅいやはああああ!!>


バカみたいなやりとりをしながら、

日々は過ぎていく。


過ぎていくコトがちょっぴりさびしい。


そんなコトを、

生まれて初めてイチローは思った。


そして

作業は終了した。

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