7話 外から見た世界

翌日。


イチローは早い時間に登校していた。


緊張しながら教室に入ると、

くだんの窓ガラスへゆっくりと顔を向けた。


フィルムはフチの部分まできっちりと

貼りつけられており、特に違和感はない。


教室には数人の生徒がいたが、

誰も気付いていないようである。


「ふぅ・・・」


イチローはほっと胸を撫で下ろしながら、

自分の席についた。


時間がたつにつれて生徒が増えていく。


だが、

窓ガラスを気にする者はひとりもいない。


有紗はもちろん、

頼子すら気付くことはなかった。


まぁ、一枚だけだしね。


担任が来た瞬間はかなり緊張したが、

それでも、何も起こらなかった。


「・・・」


すんなりと昼休みになってしまい、

イチローはボウゼンとしたまま、ラウテルに結果報告をした。


「だれも気付かなかったよ。

拍子抜けしたというか、何か不思議なカンジ」


<やっぱりねぇ>


ラウテルが言った。

何がやっぱりなのだろう。


「やっぱりってなんなんだよ?」


<人ってさ、

案外まわりのこと見てないんだよww>


「見てない?」


<そーそー>


もしかしたら、

そうかもしれない。


イチローは、ガヤガヤとしている教室を

なでるように見渡す。


みんなそれぞれに、ご飯を食べたり、マンガを読んだり、

スマホを触ったり、ローカを走ったりしている。


みんなそれぞれの『わかめスープ』にいるのだ。


イチローにはイチローの。


有紗には有紗の。


頼子には頼子の『わかめスープ』がある。


イチローはカバンからお弁当箱を出した。


放課後居残りをすることをお母さんに説明したら、

パンではもたないだろうと作ってくれたのだ。


透明なフタの上から卵焼きやからあげが見えた。

すんごくおいしそうだ。


お母さん、

ありがとう。


イチローは時計を見た。


午後から移動教室なので、

ゆっくり食べ過ぎると遅れてしまうかもしれない。


ラウテルとくだらないやりとりをしながら、

お弁当をかきこんだ。

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