幕間:雪ふる中で

「シア、ずっと魔法を使い続けているが、君は大丈夫かい?」

「はい。寒さも問題ありません。勇者様は何もお気になさらず、そのまま治療を受けていてください」

「そっか、ありがとう。こっちはちょっと、いや、結構冷気がきつくて、寒さと怪我の痛みのせいでしばらくは立ち上がる力が入んないや」

「そうですか、でしたら——」


 シアはイサムの身体を寝かせ、膝枕をして治療魔法を再開させた。


「え、ちょっと、シア?」

「? なんでしょう?」

「いや、あの、ちょっとこの体勢、恥ずかしいんだけど」

「え? なんでですか?」

「いや、なんでって——」


 説明しようとしたイサムだったが、シアの距離感には、むしろ自分が合わせるべきなのではないか、と思い、素直に甘えることにした。

 傷の痛みとそれを増幅させる辺りの冷気が、一気にぬくもりを感じるかのように安らぎへと変わっていった。


「ごめん、なんでもないよ」

「何故謝るのです勇者様。治療なのですから、遠慮なんていりませんのに」

「そうだな。そうする」


 シアの思いに心身を預けて、イサムはふと、王城を見る。


「……シア、本当にありがとうな」

「……お気になさらず。どうかもうしばらく、このままで……」


 心地よいぬくもりに身を委ねながらも、イサムは精神を研ぎ澄ませていた。


(いよいよ最後、ブラックナイトだな)


 決戦は近い。

 雪の中、最後の前の平穏だった。

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