「今日から俺は生徒会の犬！？」

第14話 『神崎会長、二人の仲を探る』

　会場の喧騒の中、私はふと、風間くんと奈々さんの様子に目を向けた。彼らはいつもと少し違う、微妙な距離感や表情の変化を見せているように思えた。風間くんは、奈々さんの方をちらりと見て、何かを伝え合うように目配せしている。奈々さんは、普段は見せない柔らかい笑みを浮かべ、恥ずかしそうに目を細めている。

私は心の中で、「もしかして、二人は…」とつぶやきながら、彼らのやりとりを静かに見守った。確かな証拠は何もないが、あの微妙な距離感や仕草の一つ一つが、私の心に少しだけ引っかかる。もしかすると、彼らはもう、秘密の関係を築いているのかもしれない。

しかし、私は焦らず冷静に、彼らの行動を観察し続けることにした。祭りの運営やスタッフのサポートに集中し、私の役割を全うすることが最優先だ。彼らの私的な関係に過度に干渉することは、誤解や不快感を生む可能性もある。

もし、何か明確な兆候や証拠を見つけたとしても、感情的にならず、冷静に対応するつもりだ。必要ならば、信頼できるスタッフや関係者と相談しながら、最善の判断を下す。それが、私の役目だと心に誓った。

会長としての立場を忘れず、公平で温かい態度を保ちながら、祭りの成功に向けてリーダーシップを発揮する。

　それから、祭りの喧騒が少し落ち着いた頃、私は風間くんと二人きりになった場所を見つけた。周囲には誰もいない、静かな控え室の一角だった。私は深呼吸をして、心の中のもやもやを抑えきれず、彼に向き直った。目をじっと見つめながら、静かな声で問いかけた。「ねえ、風間くん…」と、少し緊張した様子で言葉を続けた。「あなたと奈々さん、あの様子を見ていて気になったの。もしかして、二人は…」と、言葉を詰まらせながらも、核心に迫る。彼の表情は一瞬驚いたように見えたが、すぐに真剣な眼差しに変わった。私はそのまま、感情を抑えきれずに続けた。

「私には、あなたたちがただの友人以上の関係にあるように見えるのだけれど、本当はどうなの？教えてちょうだい。私は、あなたたちのことを心配しているの。何か隠していることがあるなら、正直に話してほしいの」

と、真剣な眼差しで問い詰めた。風間くんは一瞬、戸惑った表情を見せたが、やがて静かに息をつき、「会長…」と、低い声で答えた。彼の目には、少し照れくささと決意が混じっているようだった。私はそのまま、彼の言葉を待ちながら、心の中で「本当に、何か隠しているのかもしれない」と思いながら、彼の答えを受け止める覚悟を決めた。

　風間くんは一瞬、言葉に詰まったように見えたが、やがて静かに息をつき、低い声で答えた。

「会長…実は、僕たちはただの幼馴染です。誤解を招くような行動をしてしまったことは申し訳ないです。でも、僕たちはただ、祭りの準備や運営を一緒に頑張ってきただけです。」

彼の目には、少し照れくささとともに、誠実さが宿っていた。

　神崎会長一瞬、心の中で安堵の気持ちを感じながらも、その表情には出さず、冷静を装ったまま風間くんに向き直った。少しだけ声のトーンを低くし、鋭さを含めて言葉を投げかけた。

「ふふ、やっぱりね。あなたたち、ただの友人だったのね。ちょっと安心したわ。でも、私が心配してたのは、そういうことじゃないの。あなたたちの行動や表情、あの微妙な距離感…それだけじゃなくて、何か隠してるんじゃないかって、ずっと気になってたのよ。」

私は一瞬、目を細めて彼の目をじっと見つめながら、続けた。

「ま、いいわ。誤解だったみたいだし。だけど、次からはもう少し気をつけてね。私も忙しいし、余計な心配はしたくないから。」

その言葉の中に、どこか冷たさと、少しだけ苛立ちを含ませてみた。内心ではホッとした気持ちを隠しつつ、あえて厳しい口調で締めくくった。