第10話 『自分の気持ちを誤魔化すように・・・・・・』
静かな午後、私は生徒会室で文化祭の準備に取り組んでいた。
心の奥底にあった複雑な感情を少しでも紛らわせるために、手を動かし、計画を練り続けた。
彼らの幸せを願う気持ちと、自分の気持ちが入り混じる中、私はあえて何も考えずに集中しようとした。
飾り付けのアイデアを練りながら、頭の中を空っぽにし、ただ一つの目的に集中した。
「これでいいのか……」と自問しながらも、手は自然と動き続ける。
忙しさに身を任せることで、自分の心のざわつきを少しでも抑えようとしていた。
やがて、準備の作業に没頭するうちに、気持ちが少しずつ落ち着いてきた。
この瞬間だけは、彼らのことを考えずに済む。
そうやって、私は自分の気持ちを少しずつ封じ込みながら、文化祭の成功に向けて全力を尽くした。
心の奥にある想いは、またいつか整理しなければならないだろうが、その時まで、今はただ、準備に集中することにした。
その時、静かな生徒会室の扉が静かに開いた。風間くんと奈々が顔を見合わせながら、楽しそうに話しながら入ってきた。
彼らの足音が静寂を破り、部屋の中に温かい空気が流れ込む。
「会長、こんにちは!文化祭の準備、順調だね!」奈々が笑顔で声をかけた。
風間くんも、「お疲れさまです」と礼儀正しく続けた。
神崎会長は、机の上に置いた資料に目を落としながら、彼らの姿に気づいた。
心の奥底でざわつく感情を抑えながら、静かに微笑みを浮かべた。
「おお、二人とも、ちょうど良かった。ちょっと相談したいことがあったんだ」
彼は落ち着いた声で答えたが、その内心は複雑だった。
彼らが気づかずに入ってきたことに、少しだけ安堵しつつも、心の中では自分の気持ちと向き合う準備をしていた。
今はただ、彼らの笑顔を見守りながら、静かに応援することに決めていた。
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