召喚された悪魔令嬢の自由気ままな人助け旅
国米
第1話:召喚
迷宮の奥深くで、怪しい儀式をしている者がいた。
彼はグレイ、悪の心を持った召喚士である。
「ククク・・・儀式は終わった。もうすぐで、魔物の中でも最上位の存在【悪魔】が召喚される。」
彼は祭壇に捧げられている若い娘を見て満足げに笑う。
「成功すれば、【悪魔】を使役し王国を征服し、私こそが王となるのだ!」
バァアアアアアアン!
突如扉が開け放たれ、何者かが現れた。
「何奴!」
「召喚士グレイ!貴様もここまでだ!この【正義の使者】である俺達が成敗してくれる!」
突如現れた4人組は各々の得物で攻撃を仕掛け、それに対抗するためにグレイは魔物を召喚する。
「ウォオオオオオオ!」
「ぐわぁあアアアアア!」
激闘の末、悪の召喚士グレイは剣で体を切り裂かれ断末魔の声を上げながら倒れた。
「どうだ!悪の化身め!」
「召喚された魔物達も討ち取ったぞ!」
「正義執行!」
彼らが互いの健闘を称え合っていると、迷宮が振動し始める。
「何だこの振動は?」
「まさか・・・迷宮の主を倒したと同時に崩れるようになっていたのか?」
突然の事に驚いたが、事態を察知した彼らは素早く脱出していった。
◇◇◇
「うん・・・ここはどこじゃ?」
目を覚ますと、そこは瓦礫に囲まれた祭壇の上だった。
全く見覚えがない場所だが、召喚によって肉体を得る悪魔にはよくある事だ。
肝心の召喚主を探すと近くに倒れている者を発見した。
おそらくはこれが召喚主のようだ。
まだ少し息があるが、もう助からないだろう。
「まいったのお・・・召喚された悪魔は肉体を得る代わりに、その者の願いを叶えるというのが決まりなんじゃが・・・この状態では願いどころではないのう。」
とりあえず冷静に自分の体を確認すると、人間の若い娘の肉体である事がわかった。
「ふむ、悪魔令嬢アルテネーゼの体としては凡庸じゃのう。」
悪魔は肉体を持たず、魂だけの存在として別世界で永遠に争いを繰り返している。
その中で自我と名前を手に入れた魂のみが、召喚に応じ肉体を手に入れる資格を得るのだ。
そして誰が呼ばれるかはその器・・・つまり肉体に一番合う悪魔が選ばれる。
「なるほどのう、わらわが選ばれたのはこの娘の強い思いゆえか。」
悪魔は手に入れた肉体の知識や能力を得る事が出来るが、具体的な記憶は自我を侵される危険があるのでシャットダウンされる。
ただ強い思いは影響が残る場合があり、それに近い魂を持つ悪魔が憑依する可能性が高い。
「この娘は自由に対する強烈な憧れをもっているようじゃ。なぜそのような思いを持っているかわからぬが、わらわも自由は大好きじゃ。召喚主がいない今、この娘の果たせなかった思いを叶えてやるとしようかのう。」
まずその思いに答えるには、この瓦礫で埋まった場所から脱出する必要がある。
何かないか自分の持ち物を確認してみる。
着用している布の服、首から下げている身分証明書のような物・・・持ち物はそれぐらいである。
「となれば、召喚主から力を手に入れるしかあるまいな。」
わらわは彼に手を当て、力を探る。
悪魔は手に入れた肉体の能力だけではなく、他人からも力の一部を得る事が出来る。
ただ、元気な相手だと反発され、死んでいると力が消失して得る事が出来なくなる。
つまり、死にかけの今が丁度いい状態なのだ。
「ふむ・・・これは召喚士としての能力か。使えそうじゃ・・・それとこの迷宮の知識もあるのう。」
そうしている間に彼は息絶えた。
「お主が何をしようとしたのかは知らんが、その知識と力貰い受けたぞ。」
彼から得た知識で迷宮の壁を探っていくと、不自然なでっぱりを発見した。
「これじゃな。」
でっぱりを押し込むと、壁が音を立てて横にスライドする。
その先には階段があり、上へと続いている。
「ふむ、これが地上へと続く階段か。いざという時の脱出路が存在していたようじゃな。さあ、これが自由への第一歩じゃ。」
彼女は力強く階段を上っていった。
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