26
「やっぱり疲れた体にはお茶だな」
「気に入ってくれたみたいで嬉しいわ」
彩華がわざわざ自分の為にいれてくれたと思うとそれだけで美味しいと感じられそうだ。
勿論お茶自体の味も最高だったので、おそらくいいお茶を使っているのだろう。
「部屋に招いたのはいいけど何をしたらいいのか分からなくちゃったわね」
「そうだな、普通男子が女子の部屋に入ったら何をするんだ……?」
そこまで言い終えて俺は失言したことを悟った。
決してえっちな事をしたいとかそう言う訳ではなく単純な疑問として発した発言だったのだが……彩華のめっちゃ動揺した表情を見る限り完全に誤解されてる、うん、あれは絶対に誤解されてる。
「失礼、別に卑しい意味じゃなくて単純な疑問としての発言だった」
「そう、誤解させるような言い方、やめてよね」
なんとか彩華の誤解を解いたけど今度は場を沈黙が支配してしまった。
この空気を何とかしないと女の子の部屋に男女二人きりでいると言う事実がどんどん頭の中に侵攻してくるので理性が保てなくなりそうだ。
「何もしないのもあれだし、ボードゲームとかどうかしら? 勿論、罰ゲームありでやるわよ」
先に沈黙を破ったのは彩華だった。
「なるほどボードゲームか。将棋、オセロ、それともチェスとか?」
「そうね、チェスで行きましょう」
ここは幌北生らしく頭脳を使った真剣勝負といこうじゃないか。
彩華が部屋の奥にある棚を漁り、やたらと高級感が溢れているチェスセットを机の上にセッティングし始めた。
「罰ゲームはどうするんだ?」
「そうね、勝者がその場で決める事にしましょう。理由はそっちの方が面白そうだからね」
「分かった。そのルール乗ったぞ」
盤上は整い、先手の俺は早速初手の駒であるポーンを動かした。
続けて彩華も自信満々に駒を動かしていく。
大体30分くらいが経過しただろうか? 只今俺はかなりの苦境に立たされていた。
なんと彩華のチェスの腕前が想像以上だった為このままいくと俺は負けそうだった。
クソ、高校生に盤上遊戯で負けるとか思っていなかったんだけどな。
一手一手確実に詰めてくるタイプの彩華は普通に手強かった。
奇策こそないが目立ったミスもなく、絶対に自分が有利になる手を指してくるタイプの彩華は堅実と言う言葉がお似合いだろう。
「クソ、降参だ……」
「ふう、危ない所だったわ。もう一手ミスってたら私の負けだったわね」
俺も最後まで負けじと粘り続けたが、どう動いてもチェックメイトになる事が確定してしまったので降参することになった。
「さて、肝心の罰ゲームはどうしようから……、そうねちょっとあつくなってきたからこれ、川崎君が脱がしてくれないかしら?」
そう言ってわざとらしい笑みを浮かべた彩華は自分の履いているハイソックスを指差してきた。
「そ、そそそれは本気でおしゃってらっしゃる?」
「勿論本気よ。ただハイソックスを脱がすだけでしょ? 何を気にしてるのかしら?」
今度はぶんぶんと足を振って「はやくしないの?」と俺にアピールしてきた。
彩華め、完全に俺をおちょくりにきたな。
そうだ、彼女は昔から俺をおちょくってその反応を見て楽しんでいる節があった。
まさか付き合う前にこんなイベントが起きるとは思いもしなかったけどな。
俺は覚悟を決め、ベッドに腰かけている彩華の前に移動する。
ちょっと頭を下げてしまえばスカートで隠れているパンツが見えそうだな、とか生太もも凄いなとかちょっとえっちな事を考えてしまったが不可抗力だろう。と言うかこんな事を要求してきた彩華の方が悪い。
「変なところみたら許さないから、そこだけは覚えておきなさい」
「わ、分かってるよ。変な所は見ないから」
ふう、一度思考を落ち着かせて目の前のハイソックスと対峙する。
女の子のハイソックスを脱がす、古来より存在するベタなキュンキュン展開なだけあって余計に彩華の事を意識してしまう。
上から見下ろされる感覚、ガツンと一回やり返してやりたいがその気持ちを我慢してハイソックスに手をかけた。
これはただの布を脱がすだけの行為。これはただの布を脱がすだけの行為。これはただの布を脱がすだけの行為。これはただの布を脱がすだけの行為。
自分に自己暗示をかけるようになるべく何も考えないように布をそっと下ろしていく。
きっと今の俺は恥ずかしさで酷い表情をしているだろう、そして彩華はそれを見て楽しんでいるはずだ。
何とか右足のハイソックスを脱がし終え、左足にも手をかける。
と、ここでハイソックス独特の汗で少し湿ってしまう感覚を肌で感じ、一瞬だけ理性が崩壊しかけた。
女の子のさりげない汗っていいよね……。
今度もなるべく無心でハイソックスを脱がし終え、俺は無事試練を乗り越える事に成功した。
「なかなか面白い物を見せて貰ったわ。ありがとうね」
勝ち誇った顔で満足げに彩華はそう言った。
「こっちは精神的にもの凄く疲れた」
大きく一息ついて俺は彩華の部屋の床に座り込んだ。
本当に疲れた、理性との戦いは本当に久しぶりだった。
ほら、大学生のカップルなんてイチャイチャしたらそのままベッドインとかあるじゃん?だけど今は付き合ってすらいないし高校生だから理性を制御するのは久しぶりだったわけよ。
でも俺はこのまま彩華に何も仕返しせずに帰るのはごめんだった。
「次はオセロで勝負しないか? 罰ゲームのルールは同じでさ」
「またやるの? 今度も川崎君が負けるかもしれないのに?」
「次は勝つさ、オセロには自信があるんだ」
「そこまで言うのならその勝負受けて立つわ」
ここから俺の逆転劇が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます