「水木荘殺人事件」発端

「水木荘殺人事件」戒名にはそう書かれていた。


事件としては小さいが兵庫税務署と兵庫消防署の裏、本庁から五十メートルと離れて

いないお膝元とあっては警察の威信をかけて早期解決に努めなければならない

だろう。

御宮入りなどもってのほかである。

「以上…関係者八人の聴き取りを行いました」

二ノ宮警部は報告を終え椅子に座った。

調書を書くのは俺一人か?と愚痴ってみても仕方ない。

この署の動員は連続幼児誘拐に割かれている。

田舎から出てきた傷痍軍人の事件など近所でなければもっと雑に扱われていた

だろう。

会議は続く。

鑑識の報告のとおり被害者は左腕が欠損しており男性ではなくとも

後ろからこのようにして絞殺できることが可能です。

なるほど後ろから回しておんぶするようにか…そうすれば被害者の自重で絞殺は可能

だろう。だがそんなことを素人が思いつくか。

凶器は画材を干す時の組みひも、同様のものが部屋にもありました。

被害者の胃から微量ですが「テトロドトキシン」が検出されました。

アルカロイド系の毒、主にフグに含まれています。ただ微量すぎるためこれで致死に

至るとは考えにくいとのことです。

犯行時刻は午後二時から午後五時の間、犯行時刻が幅広いのは昨夜夜半からの雪と

部屋の温度が異常に低いことが原因とのことです。

裏口の足跡は二十六センチメートル、男物の運動靴のようです。メーカーについては

特定を急いでいます。

足跡は裏口からすぐ被害者の部屋です。外の足跡については残念ながら野次馬の足跡

に紛れて特定できません。

遺失物については水木荘の権利書があるはずなのですがないそうです。

証言にあった十万円の現金もありません。

そして黄金の髑髏像もありません。これは前日に。

容疑者の一人の土留百代から寄贈されたものらしいです。


「よし容疑者の履物すべてを押収しろ。全員の部屋の捜査令状を取る。

あれだけの監視の中だ証拠隠滅は難しいだろう。竹義の部屋の指紋採取と現状維持

全員の部屋の指紋採取は初動調査で行っている。その結果をもって重要参考人

を選出する。物取りの犯行も捨てきれん。付近の故買屋質屋の捜索も怠らないように

以上、解散」

「敬礼」


まぁ十のうち八九は八号室 型魯 こうじか、九号室 神代 舞児の犯行だろう。

事件に予断は許されないが、神代には動機があるし犯行時刻に現場を離れている。

型魯に動機はないがフグの毒を経口させて痺れさせれるし何よりアリバイがない。

誘拐犯としてマークされているので本部は型魯が本星で絵を描いているだろう。


二人の目撃証言を洗えば存外造作もないな…

とりあえず付近の公園をあたるか…


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