こうして、私は推しと入れ替わる。

如月(・∀・)

第1話

「それでは登場していただきましょう!

 人気漫画の実写化で、さ!ら!に!大ブレイク!

 栗花落つゆり ゆめさんでーす!!」


光り輝く扉が開くと、煌びやかなパーティードレスから、

スラリと白く長い、手足が伸びている女性が登場する。

盛大な歓声と拍手を浴びて、少し恥ずかしそうに笑いながら、

深く一礼する。顔を上げて一般客へ小さく両手を振ると、

失神するのではないか、と思うほどの客の悲鳴が上がった。


「なにこれー!?

 イケメンが来た時並みの悲鳴なんだけどー?!」

「目の前で見ると、より一層かわいいー!」

「見て!?もう、つゆりちゃんの肌が透き通りすぎて、

 つゆりちゃんごしにお前が見えるわ~」

「言い過ぎ、言い過ぎ!」


ベテラン芸人さん達が興奮気味に笑いを誘う。

いろんなちゃちゃを入れられつつも、

つゆりちゃんは笑顔で応対する。




で。そんな姿を画面越しで見守る私。




「つゆりちゃん…かんわいい~~~」


買って来たかつ丼を頬張りながら、録画した番組を見る。

激務を終えてからの至福のひと時である。


高卒。工場勤め。恋人なし歴=年齢の33歳。

容姿も気にしないおかげで現在最高体重80キロ突破。

33年間、夢も目標もなく、なんとなくで生きて来た。

姉が結婚し実家を継いだので、私は流れて1人暮らし。

そんな感じで周りに流されて生きてきた私だが、

唯一の趣味がある。


女優、栗花落 夢を陰ながら応援すること。

推し活これがあるから、日々、生きていられるのだ。

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