『Echoes of Logos ― 脳内沙門、無双す。―』

ちょいシン

第1話『僧侶、ログインす。』

畳に正座したまま、[[浦見真観うらみ・しんかん]]は静かに深呼吸をした。年季の入った袈裟に、ツヤのある数珠。


 だが、その頭には未来の技術の塊――《フルダイブ・ヘッドユニット“LUX-α”》が装着されている。


 五十五歳、肉体は衰えても心は鋼。 


 家伝の武術天覇流の継承者にして、ゲーム実況チャンネル『ちょいシンGames』の運営者でもある。


 「合掌。南無――ログイン。」


 音声認証とともに、視界が白く塗りつぶされ、次の瞬間には、果てしない光の渦が眼前に広がった。


 ――Welcome to《Echoes of Logosエコーズオブロゴス》。


 耳元で、温かくも機械的な女性の声が響く。


 「記憶・経験・精神データの解析を開始します……」


 光の渦が、過去の記憶を映像として巻き戻す。


 ――幼少期、ファミコンを握りしめ、ドット絵の勇者に胸を躍らせた。

 ――高校時代、サターンとPSの戦争に終止符を打つため、両方を買った。

 ――社会人になっても、ゲームは心の師だった。


 そして、いま。


 「ついに来たか……脳で戦う時代が。」


 口元が、自然とほころんだ。

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