第2話 決起
お茶と餅がおいしい春も過ぎて、季節は夏となった。特に今年の夏は気温が高い。地球は何がしたいんだ?風邪にでもかかってるんじゃないか?
俺は扇子でパタパタと首元を仰いでいるが一向に暑い。
「わしも仰いでくれぬか?」
暑さにやられて縁側でくたばっている和尚が言う。
「主を仰ぐ暇があらば自分をあおいでおるよ。」
こんな季節に寺に来る奴はいないだろう。もしくは、よほど一次求心性神経がサボっておるか何かで、暑さを感じない化け物だろう。ハハッそれこそ鬼か何かだな。
…そう思っている愚かな時もあった。本当に来るとは普通思わないだろう。それも鬼が。
「道案内頼みたく、法蓮の寺はいずこだ?」
昼下がり、寺の前で掃除をしている俺の頭のはるかに上空から声がした。見上げてみると、1間は優位に超えておる男で、菅笠をかぶっておるのと、若干西に偏った太陽による逆光で、顔はよく見えない。肩幅も広く、米俵2俵を平然と担げそうだ。
「寺ならここだが、何か用なりや?」
そういえば、和尚の名前って、「法蓮なんちゃら」みたいなやつだったな。いっけね、「和尚」としか呼ばないから、忘れかけてた。てへぺろ!
「まあな。」
なんだこいつ冷たい奴だな。摂氏−273.15 度に凍った視線が俺のココロを貫いた。俺のココロを構成している原子の振動が完全に止まるような視線だな。よかった。少しは涼しくなりそうだ。とはいえ、多少腹が立った。
そいつは、どかどかと寺に入っていった。
「はじめまして~」
と言われて
「今忙しいんで。」
と答えられた気分だ。もどかしい。あーあ掃除はやめじゃ。箒を立てかけ、俺も寺の中に入っていった。
寺の中に入ると和尚と例のデカブツが何やらもの難しそうな顔で話していた。デカブツは笠をとったことにより、はっきりと、その面と俺からの一方的なご対面を果たしたのだった。和尚たちは、俺の存在にまだ気が付いていないようだ。あれ、あのデカブツの顔どこかで見覚えが?いつか、あいつと会ったか?最近は記憶があいまいだな。てなことを考えながら、見覚えのあるようなデカブツの顔を観察していると、和尚と偶然目が合った。しまったっ。と思い急いで視界から、和尚の顔を外そうとしたが、その顔がだんだんにやけた顔に変わっていく。クソッ また面倒くさいことに巻き込まれそうだ。と思った俺の脳内は驚くほど的確な予想をしていたのだ。
「掃除が終わったのか、丁度よい。この客主に用があるそうでな。」
和尚はそう言った。用?俺に?なぜ why?そんなことを考えながら、俺も和尚の隣に座った。すると、デカブツが驚いた顔をして、口を開いた。
「さっき会ったお前が、幸親であったか。わしの名前を覚えておるか。」
知り合いだったか。通りて見覚えがあるわけだ。はいはい来ましたよ。ついにこの奥義を使うときが。もちろん俺があのデカブツの名前なんて覚えているはずがない。だがこの奥義を…
「おぬしそういえば、幸親という名前じゃったな、すっかり忘れておったわ。」
語り手の邪魔をするんじゃねえ和尚。ていうか、俺が言うことじゃないが、お前も名前を覚えきれないのかよ?
まあ話を戻そう。この奥義を使うことにより、名前を覚えていなくても、この状況を打破できるのだ!いざ実践。
「すまん。なんという名前じゃったかな。」
デカブツは、若干、北風のようなため息をついて、
「遙だ。まさか戦友の名前を忘れるとはな。」
「違う。下の名前は知っておる。上の名前はなんじゃ?」
この「名前を覚えているか」の戦いに勝利を確信し、今川義元のごとく優越感に浸っている俺に、「織田の数千の兵」という名の次のとある言葉が、奇襲をかけてきた。
「わしは、性を持っておらぬ。」
大敗北‼沈黙の妖精が、この部屋を敗走した。
「つくづくあきれた奴だ。」
デカブツ改め遙がその沈黙を破り、そういった。隣では和尚が笑いをこらえている…が今にも爆発しそうだ。にしても聞いたことあるな。遙…か、はるか、ハルカ、遙、あー!思い出した。鬼ヶ島の戦いで参謀を務めていた男だ。いやまてよ、あいつは、桃太郎軍にとって、最重要危険人物だし、都でも、晒し首が晒してあった。いったいどうゆうことだ。亡霊か?お前は亡霊なのか?そんなことは、まあとりあえず、ココロの奥でオドらせといて、とある疑問が残った。
「それで、どんなようだ?」
デカブツ改め、遙改め、亡霊が言った。
「一揆をおこす!」
その顔は第二次世界大戦中にアルプス越えを決意した。チャップリンのように光り輝いていた。
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