第35話 朝食

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 理性のダムは決壊し、またもや僕は肉欲に負けた。



 その上、天罰なのか。ウィリアムが口を滑らせた所為で、テレビでは僕とクラリスが子作りした事が話題となっている。




『我が国、桜帝樹にて吉報です。クラリス様がご懐妊なされたらしく――』


『世界最強の血が我が国に――』



 狭い座敷に置かれたテレビ。桜帝樹の様々なテレビ局は僕達の結婚を話題にしていた。最初は単なる子作りという話だったが、世間は国際結婚だと判断したらしい。




 というか、巫覡ふげきの一族は国の頂点である。まさか巫女がヤリ捨てられたなんて、思うはずもないらしい。



 必然、僕らは世間から結婚を祝福されてしまった。



「す、すまない。まさかこんな事になるとは……」



 ゲーム設定でも記載されていたが、ウィリアムはクラリスの事となるとうっかり屋さんな一面があるらしい。



 座卓を挟んで僕の正面に座る彼は、どこか申し訳なさそうに身を縮こませている。



「いえ……。別に結婚する事、それ自体は構いませんよ……。クラリスもエリカも文句なしに可愛いですから……」



 座卓に並べられた朝食を口にしながら、僕は肩を竦めた。



「……え?」



 クラリスはウィリアムの隣に座っており、どこか嬉しそうに驚いていた。まさか結婚を承諾されるとは思っていたかったのだろう。



「本当かい……!?」



 ウィリアムは娘が受け入れられた事が嬉しいのだろう。どこかホッとしたような様子で僕と視線を合わせる。




「まぁ、ただ……、夫婦らしいことはしばらくできそうにありませんが……。これから〈神殿〉に向かわないないといけないので……」




 僕はサケの身を箸で切り分けた後、納豆と卵黄を混ぜる。桜帝樹で洋食は好まれないらしく、朝食だと特に和食傾向が強い。




 久しぶりに食べる所為だろうか、納豆や味噌汁が無駄に美味しく感じる。いくらでもおかわりしていいと言われ、僕は既に三人分の量は食べていた。




「神殿……、かい?」



 ウィリアムは食事の手を止め、首を傾げる。エリカは黙って話を聞きながら、僕の茶碗を取って米を追加していた。




「えぇ。少し厄介な相手がいるんですよ、僕が死ぬかも知れない災厄です。弱体化なしのA級の特例指定モンスター。僕でさえ、まともに戦えば普通に殺されてしまう。そういう別格の存在です」




 最近、ずっと悩んでいた事があった。ゲーム知識を駆使した弱い者イジメに等しい無双なんて、正直つまらない――と。




 思い返せば無双ゲーなんて殆どした事がない。確かに最初は楽しいが、途中で飽きて止めてしまうのだ。




 僕が楽しいと思えたのは、近しい実力の相手と戦うゲーム。それも実力だけではなく運で勝敗が左右される接戦。そういうゲームばかりやり込んでいた。




 ボスを残し、カーネリアンという巨悪を殆ど壊滅させた今、もう世間の事情を気にする必要も当分はないはず。




 この際に僕としては、本当の冒険をしてみたかった。命懸けの戦い。運に左右される死闘に挑みたいと考えている。




「予め言っておきますが、クラリスやエリカは連れて行けません。特にクラリスは駄目ですね。特例指定モンスターを連れているから、少し気配が目立ち過ぎてしまう」




 特例指定モンスター同士は、互いの気配に過敏だ。僕がクラリスを連れて神殿に迎えば、恐らく警戒されてしまうだろう。



 実力的にも連れて行けるのは、シノンだけ。目的地には天衣家の隠れ家もある。ついでに逼塞ひっそくしている両親にも挨拶しようと、僕は朝食の後に身支度を整えた。



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 久しぶりの投稿!笑


 夏バテで倒れてました!



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 モチベが上がります!




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