第9話 ダムが決壊寸前!!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 抱き抱えられながら、フルーツサンドを食べているクラマルを見ながら、シノンは罪悪感を抱いていた。



自分はモンスターにソウルフードという、市販の餌を与えており、そこまで気を遣ってあげる事をしなかった。



 抱き抱えられながら、喜んでフルーツサンドを食べているクラマルを見ていると、自分はあまりにもテイマーとして薄情な気がしてくる。



 兄は自分と違い、モンスターを溺愛し、懐かれている様子。〈愛情補正〉を目の当たりにした以上、現代で言われている〈モンスター調教〉は、ただの虐待に等しいと言わざるを得ない。



 仮に〈愛情補正〉の話が世間に広まれば、モンスターと信頼関係を築く事が重視される時代となるだろう。



 そう考えたシノンは今までの行為を改め、モンスターと向き合う事を考えようと切り替えていた。



「兄さん。組み立て終わりました」



 一緒に買い物に行き、購入した台を庭に用意した。



「日が落ちつつあるから、手早く料理をしようね」



 炭火焼の準備を済ませ、口に肉を通しながら、ショウは言う。



「そうですね」



 久しぶりに会ったという事もあり、どうしても淡白なリアクションになってしまうが、内心では凄くテンションが上がっているシノン。




 かつて仲が良かった頃を思い出し、またこうして一緒に気軽な会話ができる事が、楽しくて仕方がないらしい。



「わ、私は、何をすればいいですか……?」



 新しい知識や体験を得る以上に、兄と共に過ごせる時間を彼女は貴重だと思っていた。



 ――それから数時間。



 兄妹で仲良く会話しながら、モンスターに料理を作っていた。いつも冷たい態度のシノンとは違い、初めて愛情を注がれた実感が得られたのか、モンスター達も目に見えて分かるほど喜んでいた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 夜。風呂に入った後、僕は自室でシノンと喋っていた。正直、ショウの過去は殆ど知らないので、僕は一方的にシノンの話を聞く様に、上手く会話を誘導していた。




 そしてベッドに腰を降ろし暫く会話が続き、僕は「……そろそろ、寝ようか。僕はソファで寝るから、シノンは――」と立ち上がった時、腕を引っ張られる。




「…………。……兄さん。私と一緒に寝ませんか?」



 どこか恥ずかしそうに、勇気を振り絞った様にして、シノンは上目遣いで僕に言う。



「私は、その……。嫌じゃないので……」



 シノンは顔を赤く染め、膝を擦り合わせるような仕草をしつつ僕に視線を向けていた。久しぶりに会えて、楽しく会話できたのが嬉しかったのだろう。




 一緒に寝たいとか考えるのは少し子供っぽいが、案外勉強ばかりしていた所為で、多少精神年齢が低いのかも知れない。



 正直に言うと妹の期待に応え、一緒に寝てあげたいが、少し躊躇してしまう。何故なら妹は当然寝巻なんて用意している訳なく、今着ているのは男性用だ。




 つまりショウの自宅で予備として用意されていた、新品の寝巻である。そして下着は男性用しかなく、ブラジャーなんてしている訳もない。



 流石に一緒に寝るのは気不味いだろう。ここはやんわりと傷つけない様に断らなければならない。



「別に嫌って訳じゃないけど、兄妹とはいえ一緒に寝るのはよくないよ。こういうのは惚れた相手とだけ――」



 僕が言い掛けた時、強く腕が引っ張られる。シノンに覆い被さる様に、僕は倒れた。



「兄さん……、私……、誤解してました……。今まで兄さんが何の努力もせず、成績も平凡だって、お母さんから聞いていて……」




 シノンが僕を抱き締める。それに真剣な話みたいだから、ここは空気を読んで動かない方が良いと思い、黙って聞く。



 正直、凄く気不味いけど、兄として聞いてあげなきゃいけない気がした。



「私、自分が一番凄いって思っていて、皆自分より下だって思って生きてきました……。でも兄さんの方が私より、よっぽど凄い人で……。私、嬉しくて。これで兄さんがお母さんに冷遇されなくて済みます……。それに冷たかった兄さんが、また、私に優しくしてくれて……」



 何やらシノンは悔しさより、兄に対しての尊敬が強いらしい。変にプライドを拗らせる事なく、ゲームと同様に根が凄く良い子みたいだ。




 こんな事を言われたら、空気的に一緒に寝る事は拒みにくい。正直、今の状況でも理性が限界だが、死ぬ気で耐えるしかない感じだろう。



 自信はないが、やるしかない。夢にまで見た白髪美少女だとしても、相手は血の繋がった妹だ。理性のダムが決壊する事だけは、絶対に避けなければならない。



「だから私――兄さんの子供が欲しいです……!」


「…………ッ⁉」


 シノンの言葉に、僕は目が点になった。



――ピキッ。



 心のどこかで理性のダムに、ヒビの入る音がした。




――――――――

〈あとがき〉


【★】してくれると嬉しいです!!


 モチベが上がります!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る