第9話 ダムが決壊寸前!!
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抱き抱えられながら、フルーツサンドを食べているクラマルを見ながら、シノンは罪悪感を抱いていた。
自分はモンスターにソウルフードという、市販の餌を与えており、そこまで気を遣ってあげる事をしなかった。
抱き抱えられながら、喜んでフルーツサンドを食べているクラマルを見ていると、自分はあまりにもテイマーとして薄情な気がしてくる。
兄は自分と違い、モンスターを溺愛し、懐かれている様子。〈愛情補正〉を目の当たりにした以上、現代で言われている〈モンスター調教〉は、ただの虐待に等しいと言わざるを得ない。
仮に〈愛情補正〉の話が世間に広まれば、モンスターと信頼関係を築く事が重視される時代となるだろう。
そう考えたシノンは今までの行為を改め、モンスターと向き合う事を考えようと切り替えていた。
「兄さん。組み立て終わりました」
一緒に買い物に行き、購入した台を庭に用意した。
「日が落ちつつあるから、手早く料理をしようね」
炭火焼の準備を済ませ、口に肉を通しながら、ショウは言う。
「そうですね」
久しぶりに会ったという事もあり、どうしても淡白なリアクションになってしまうが、内心では凄くテンションが上がっているシノン。
かつて仲が良かった頃を思い出し、またこうして一緒に気軽な会話ができる事が、楽しくて仕方がないらしい。
「わ、私は、何をすればいいですか……?」
新しい知識や体験を得る以上に、兄と共に過ごせる時間を彼女は貴重だと思っていた。
――それから数時間。
兄妹で仲良く会話しながら、モンスターに料理を作っていた。いつも冷たい態度のシノンとは違い、初めて愛情を注がれた実感が得られたのか、モンスター達も目に見えて分かるほど喜んでいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夜。風呂に入った後、僕は自室でシノンと喋っていた。正直、ショウの過去は殆ど知らないので、僕は一方的にシノンの話を聞く様に、上手く会話を誘導していた。
そしてベッドに腰を降ろし暫く会話が続き、僕は「……そろそろ、寝ようか。僕はソファで寝るから、シノンは――」と立ち上がった時、腕を引っ張られる。
「…………。……兄さん。私と一緒に寝ませんか?」
どこか恥ずかしそうに、勇気を振り絞った様にして、シノンは上目遣いで僕に言う。
「私は、その……。嫌じゃないので……」
シノンは顔を赤く染め、膝を擦り合わせるような仕草をしつつ僕に視線を向けていた。久しぶりに会えて、楽しく会話できたのが嬉しかったのだろう。
一緒に寝たいとか考えるのは少し子供っぽいが、案外勉強ばかりしていた所為で、多少精神年齢が低いのかも知れない。
正直に言うと妹の期待に応え、一緒に寝てあげたいが、少し躊躇してしまう。何故なら妹は当然寝巻なんて用意している訳なく、今着ているのは男性用だ。
つまりショウの自宅で予備として用意されていた、新品の寝巻である。そして下着は男性用しかなく、ブラジャーなんてしている訳もない。
流石に一緒に寝るのは気不味いだろう。ここはやんわりと傷つけない様に断らなければならない。
「別に嫌って訳じゃないけど、兄妹とはいえ一緒に寝るのはよくないよ。こういうのは惚れた相手とだけ――」
僕が言い掛けた時、強く腕が引っ張られる。シノンに覆い被さる様に、僕は倒れた。
「兄さん……、私……、誤解してました……。今まで兄さんが何の努力もせず、成績も平凡だって、お母さんから聞いていて……」
シノンが僕を抱き締める。それに真剣な話みたいだから、ここは空気を読んで動かない方が良いと思い、黙って聞く。
正直、凄く気不味いけど、兄として聞いてあげなきゃいけない気がした。
「私、自分が一番凄いって思っていて、皆自分より下だって思って生きてきました……。でも兄さんの方が私より、よっぽど凄い人で……。私、嬉しくて。これで兄さんがお母さんに冷遇されなくて済みます……。それに冷たかった兄さんが、また、私に優しくしてくれて……」
何やらシノンは悔しさより、兄に対しての尊敬が強いらしい。変にプライドを拗らせる事なく、ゲームと同様に根が凄く良い子みたいだ。
こんな事を言われたら、空気的に一緒に寝る事は拒みにくい。正直、今の状況でも理性が限界だが、死ぬ気で耐えるしかない感じだろう。
自信はないが、やるしかない。夢にまで見た白髪美少女だとしても、相手は血の繋がった妹だ。理性のダムが決壊する事だけは、絶対に避けなければならない。
「だから私――兄さんの子供が欲しいです……!」
「…………ッ⁉」
シノンの言葉に、僕は目が点になった。
――ピキッ。
心のどこかで理性のダムに、ヒビの入る音がした。
――――――――
〈あとがき〉
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モチベが上がります!!
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