chapter15~正座で足が痺れないようにするコツってあるなら教えて欲しいよね~

「で,なんで私が呼ばれたのか,説明が欲しいわ」

 腕を組んでそう言いながら,氷上先生は脚を組み替えた。

 タイトスカートから伸びる脚が,やたらとエロい・・・なんて考えてる場合じゃないっ!


「そうれは,学校での監督役が必要だからですよ。氷上先生」

 翼さんは手を膝に置きながら,そう言った。

 短めのプリーツスカートの三角地帯が・・・いや,そうじゃないっ!


「監督役?」

「ここにいるほとんどの人間は黄梅の生徒です。栞ちゃんは中等部ですけど」

「はあ?」


 ここは透子さんの泊まるホテルの小宴会場。

 宴会に使われない場合は,会議室として使われているそうだ。

 コの字型に長机が配置され,今は会議室モードといったところだろうか。


「なんで監督役が必要なのか,説明してもらいたいわ,山吹さん」

 凄みのある声で言う美咲。

 脚を組んでいるので,ムッチリした太ももが・・・いやいやいや。


「そうです。生徒の恋愛に,教師が口出しする権利はないと思います」

 栞ちゃんが行儀よく言う。

 中等部の制服をキチンと着こなしているので,綺麗なふくらはぎしか見え・・・違うっ!


「そうですよね~!センセは関係ないと思いま~す!」

 芹夏ちゃんが元気よく言う。

 それ以上脚を開くと・・・ゲフンゲフン。


「あなた誰よ?」

 透子さんが訝しげに言う。

 今日はピンクのゴスロリですかー!


「私は日野芹夏!衛先輩に大事なものをあげちゃいました!てへっ」

「はああ!?」

 透子さん,顔が怖いです。


「大事なものってファーストキスでしょ?あまり大げさに言わないで」

「は~い」

 翼さんが芹夏ちゃんをたしなめる。

「衛クンのファーストキスは,私が奪っちゃったし」

「「「「「はああああああっ!?」」」」」

 火に油を注いで,どーすんのっ!?


「・・・ねえ,私が呼ばれた理由は?」

 居心地悪そうな原さん。

 ミニのタイトスカートから・・・以下略。


「原さんは,さしずめ小野氏のブレーキ役と言ったところだろうさ」

 輝紗良先輩が腕を組み,指をトントンとしながら言う。

 スカートが長めなので,膝まで隠れてる。


「俺は?」

 巧が自分を指差しながら言う。

 うん,僕も不思議だ。


「竜崎君は妹さんの保護責任者として呼んだわ。ただ・・・」

「ただ?」

 翼さんが,困ってる?


「まず,みなさんに確認しておきたいんですが,ここにいる方は原さんを除いて,みんな衛クンに好意を寄せているという認識で間違っていないですね?」


「そうよ」

 顔が怖いよ,美咲!?


「そうで~す!」

 芹夏ちゃん,緊張感ないなあ!?


「その通りだが?」

 輝紗良先輩,クールに言うなら頬染めないで!?


「好意どころのものじゃありません」

 栞ちゃんは物怖じしないなあ!?


「え?私は違うけど・・・?」

「先生はアウトです」

 氷上先生に対して厳しいな,翼さん。

 そしてみんな頷いてる!?


「聞くまでもないわね」

 自信満々な透子さん。


「え?俺も入ってるの!?」

「竜崎君はグレーゾーンよ」

「兄さんまさか・・・!?」

 栞ちゃんが驚愕した!

「いやいや,俺彼女いるよ!?」

「両刀使いの可能性もあるな」

 輝紗良先輩が冷静に言い放った!

「めぐちゃんの持ってた薄い本に,男同士で・・・」

 栞ちゃん,何言ってんの!?

 薄い本って!?

「・・・まあ,疑惑は晴れていないわ」

 翼さんがバッサリ切り捨てた!

「えええええ?」

「なので黙って聞いてなさい,竜崎君」

「お,おう・・・?」

 なんか無理やり納得させた!?


「・・・衛クンは,ここにいるみんなから求愛されて非常に困っています」

「アンタがハーレムとか言い出すからでしょ!?」

 すさんでんなあ,美咲。

「それについては反省してるわ。だから今日はみんなに提案があって,集まってもらったの」

「提案?」


「まず,知っている人も知らない人もいるから言うけど,衛クンは失恋したばかりよ」

「え?」

 美咲がギョッとしてこっちを見る。

「そうだったんですか!?」

 芹夏ちゃんも同じ反応だ。

「まあ・・・」

 透子さんも驚いている。

 事情を知ってる輝紗良先輩と氷上先生,栞ちゃんと巧はなんとも言えない表情をした。


「そうよね?衛クン」

「・・・うん」


「あ,相手は誰なのっ!?」

「・・・美咲は知らないか。母さんの担当編集の人だよ」

「えっ!?衛君が失恋したのって,さわちゃん!?」

「・・・はい」

「対談の時一緒にいた,あの巨乳編集か・・・」

「・・・そうです,透子さん」

「アタシ見たことある。最近よくマンションですれ違う,あの童顔の人か・・・」

 美咲は同じマンションだから,すれ違うことも多いだろう。

「さわちゃん,彼氏できたって言ってたけど・・・」

「・・・告白する前に失恋しました」


「ま,衛っ!」

 美咲が立ち上がって,僕の元に駆け寄ろうとする。

「そこまでよ,羽原さん」

 それを翼さんが止めた。


「なんでよっ!こんなに衛が辛そうなのに,慰めちゃダメなのっ!?」

「だから,よ」

「はあ?」

 火花がバチバチですっ!


「・・・なるほど,山吹さんと言ったかしら。あなたの考えが分かってきたわ」

「翼で結構です,小野先生」

「では,私も透子でいいわ。翼さん,あなたはルールを決めようというのね?」

「はい。衛クンは,未だ失恋の傷が癒えていません。新しい恋を見つける気力もないでしょう。そうよね,衛クン?」

「・・・うん」

「失恋の傷を癒やす方法はいくつかありますが,やっぱり時間が解決する,というのが自然でしょう?」

「そうね。でも他にも方法は・・・」

「それです,透子さん」

「え?」

「身体を使って,性欲を満たしてあげることで,衛クンの失恋の傷を癒やすこともできるでしょう」

「せ,性・・・!」

 おっと,美咲は初心だった。


「でもそれで,衛クンは本当に幸せになれますか?」


「・・・どういうことかしら?」

「衛クンは,とても真面目で優しい人です」

 ウンウンと氷上先生が頷く。

「一時の情欲に溺れて,肉体関係をもったりしたらどうなります?」


 美咲は顔が真っ赤だ。

 一番年下の栞ちゃんは・・・えらい冷めた顔してるな!?


「・・・責任を取ろうとするでしょうね」

「その通りです,透子さん」

「・・・つまりあれか,山吹嬢。そういう行為を行うでなく,少年の心を癒やすことができればと言いたいのだな?」

「そうです,黒峰先輩。まあ,多少のスキンシップはいいと思いますが,やっぱり健全な交際であるべきだと私は思います。そうですね?氷上先生」

「・・・ま,まあ,教師としては?不純異性交遊はいけないかと!?」

 なんで焦ってるんですか!?


「待ちなさいよ!衛のファーストキス奪っといて偉そうにっ!」

「それについては反省してると言ったわ,羽原さん。でも,欧米じゃキスなんて友達同士でもするものよ?」

「ここは日本よっ!」

「あなただって,衛クンの裸見たことあるでしょ?」

「は,はだかっ!?」

 栞ちゃんの表情が崩れた。

「そ,それは小学校上がる前のことよっ!?」

 そうだった。

 小さい頃は一緒にお風呂入ったことあったっけ。


「なるほど,山吹嬢が言いたいのは,一線を越えちゃ駄目ってことだな?」

「はい,そうです。黒峰先輩」

「抱きしめるくらいはアリか?」

「・・・その先に進まなければ?」

「なるほど。自制心をもて,ということか」


「考えはよく分かったわ,翼さん。私が暴走しないよう原さんに釘を刺してもらえばいいのね?」

「はい。学校では氷上先生が・・・ちょっと不安ですが」

「なんで不安なのよっ!?」

「一番ヤバいの氷上先生じゃね?」

 巧,厳しいなあ!?

「私は賛成です。これで美咲先輩へのアドバンテージがなくなりますっ!」

「芹夏っ!?」


「・・・あの,芹夏さんって仰いましたっけ」

「何かな?栞ちゃん」

「アドバンテージって何ですか?」

「美咲先輩の身体を見なよ・・・」

「・・・ああ」

 なんか共感してる!?


「・・・私は衛クンのハーレム計画を諦めたわけじゃないわ。でもやっぱり1番ではいたいもの。黒峰先輩は違うようだけど」

「・・・いや,私もできるなら1番がいい」


「では正々堂々と勝負しましょう。期限は衛クンの心が癒えるまで。もしルール無視をするようであれば,問答無用でヒロインレースから降りていただきます」

「受けて立とうじゃないの!」

 だから美咲,顔が怖い。


「いいですよ~?」

 芹夏ちゃんは,美咲を下せればいいようだ。


「分かった」

 輝紗良先輩が闘志を燃やす。


「せっかくめぐちゃんから融通してもらった,薄い本の知識が使えないのは残念ですが,承知いしました」

いや栞ちゃん,めぐちゃんって誰!?


「私も了解よ。私は学園の生徒じゃないから,不利ではあるけど,それくらい撥ね除けてみせるわ!」

 ゴスロリとガッツポーズってミスマッチだなあ。


「私がの先生の暴走を止めればいいのね?」

 原さんが神妙な表情で言う。


「わ,私はどうすれば・・・?」

「氷上先生はまず,己の自制心を鍛えて下さい」

 翼さんも厳しいなあ!


「俺は・・・?」

「彼女と別れたら,参加してもいいわ」

「別れねえよっ!?」




「みんなの意思確認が取れたところで,最後に衛クン,何か質問があるかしら?」


「・・・僕は,いつまで正座してればいいんですか?」

 脚が痺れた。

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