第23話 ハズレ
鹵獲したコクピットシェルから現れたのは、果たして絶世の美少女だった。
ヘッドギアを脱ぎ捨て、水のように煌めき流れる白銀の髪を掻き揚げ現れたのは、青みが透ける白い肌。
見開かれた二つの大きな赤い目は、まるで複雑にカッティングされた宝石のように様々な光彩を放っている。
世を絶する、という美とはこれか……などと、パピプッペポ様のもたらす美以外に触れたこともない十六才のあたしはまるで魂が消し飛ばされてしまったようにぼっ立ちしていた。
美少女が拳ダコにまみれキズだらけの分厚い爪で装甲された五本の指を持つ手を伸ばし……は?
「動くなよお前ら。この嬢ちゃんの首が三回転しちまうぜ?」
ガラガラした若いイキりにーちゃんの声……
え?誰が喋ってんの?
アントン?ヘッケル?
いや、あいつらもっとオッサン丸出しの酒焼け声やぞ!
あーしのドタマを鎖骨下に抱えてる美少女……のハズ、を目だけで見上げる。
そこには凶相に歪んだ白く美しい男の顔があった。
「へえ、軍隊にゃ人質なんてきかねえ、って聞いてたけどな。結構偉いヤツなのかおまえ」
赤い目がチラリとあたしをみる。
この目の光には覚えがある。
肉塊とまぐわいながら何度もみた、見せられた行為のリプレイ動画。
その内のもっとも多く再生された、処女を破られ全身をズタズタに食い散らされた直後のあたしの目だ、
腰椎から怖気がかけ上がってきた。
「お、おまえたち!撃つなよ、絶対に撃つなよ!コイツは本気だっ……?!」
まるで鋼でも巻かれたように動かない首の下で両手を使い必死にジェスチャーすると、銃も構えずにぼっ立ちしたままのクルーやナリス達の頭上にパピプッペポ様の胸像が現れた。
「えっ……パピプッペポ様?!…あっ、ナニをしてるお前逹っ!あたしの命などに構わず撃て!」
とーぜんクルーはあたしの言葉なんかになんの反応もなく、パピプッペポ様の胸像へ正対し敬礼している。
『よくやったゾラ』
格納庫内にパピプッペポ様の声が響いた。
「親玉か?おい!この女の子が大事なら」
パピプッペポ様の声が少年の声を遮り響き渡る。
『ゾラから離れろ、俗物』
「ナニが俗だって?いいから……あれ?」
あたしは拘束から開放され、素早く前転すると足首のホルスターから拳銃を抜いて美少年へと構える。
「なんだ、体が動かねえ…おい?何なんだお前!」
『この者は私の逃れ得ない死となる者……その命、貰い受ける』
パピプッペポ様の胸像が少年へ手を伸ばし、そこからエメラルドの波が少年へ降りかかる。
「なんだこりゃあ……うっ、やめろ!」
顔を苦悶に歪めて少年、ユーミが叫んだ。
ってか、逃れ得ない死?
パピプッペポ様の?
「ジロー様、撃ちます!」
脳がパピプッペポ様の言葉を理解したとたん、引き金を連続で引き続けた。
ユーミ少年の胸に白い火花が連続で弾けた。
「実弾を……装甲してるの?!」
「ゾラ、抑えろ。これは私の手で決着せねばならんのだよ……しかし」
うっ、パピプッペポ様の御意を僭越してしまった…。
振り向くと、パピプッペポ様は目をすがめ少年を見ていた。
『お前…なぜ男の肉等纏っている、正しきへ戻れ!』
え?男スーツ?
そんな装備あったっけ……ヴェーダの新兵器なの?
あたしもパピプッペポ様を真似て目をすがめながらユーミ少年をみる。
……は?
そこには、肩が痩せ背も縮んだブッカブカのパイロットスーツを着たユーミちゃんが「ほえ?」とした表情で立っていた。
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