第17話 会敵
「船長、リーゼ隊から艦影来ました」
オペレーターの報告と共に艦外へ制圧目標の白い船体が表示された。
「これは……ソクブラン?」
船長の驚きに問いをかける。
「知ってるのか、どんな船だ?なんかカッコいいけど」
「直接目視した経験はありませんが、旧ユニオンにおいて伝説的な活躍を残した有名な船です。その姿は天を駆けるペガサスの様だとも……いや、特徴的な中折れの翼がありません。……これがヴェーダの新型かもしれません」
「ほー、重巡クラスか……これは一人で来ていたら詰んでいたな」
船外に描かれた巨大な敵艦船の四つの長大なカタパルトデッキから次々と艦載リーゼが発艦して行く。
「どうやら先手を取れたようだ。ニナイ参長閣下の読みに感謝だな」
先に発見されてたら一瞬でソラの藻屑だった。変に勘繰らず作戦スケジュール通りに航行してきて良かったよ・・・
「エンゲージ、交戦に入ました!敵影15、いや16…ナリス機キル!敵影15…12に減少、スコア出します!」
ブリッジの窓の向こう、艦外に描き出されたスコアボードに、彼我の戦力差と撃墜、彼撃墜の様子が様々なマルチアングルで……
「って、何こんなレクリエーションルームで見るような実況映像が流れてんのよ?!」
「お気に召しませんか?隊の先頭で戦うリーゼレータ達との一体感を味わ……共に戦っているとの感興が……いや、運命を共にする興奮を・・・ではなく、その」
「あ、ああ……すまない、私のような士官に上がったばかりの者が歴戦を経た者達の通例に異を唱えるなど口幅ったいよな、許してくれ」
めたくそ早口で謝罪し不毛な追求を打ち切った。
「ナリス隊、帰還してきます!ナリス中尉から通信開きます」
『リオたんと他一機を取られた、シェルを回収し帰投する』
「207座標軸で二秒後に援護射撃を行う。当たるなよ」
『ブリギットの位置が割れるだろ、いいのか?』
隣のキャプテンシートから、うっ、と息を飲んだ気配が伝わってくる。
全砲門投射完了しました、との報告に被せ、船長が微笑みながら答えた。
「早く帰りたいだろ?」
『はぁ……まっ、そういうコトにしといてやんよ』
ナリス中尉の胸像の消滅と共に通信が終わった。
「追撃は……無いのか?」
スコアボードを見る。
キル14、ナリス中尉のデフォルメされた胸像が二指を立てたあのサインを突き出す映像が繰り返し流されていた……ええ、なんなのコレ……ゲームよりゲーム的じゃん、戦術実況にこんなソフト組ませんならガンや機体のドライバとユーティリティを充実させろよ!
呆れと憤懣に顔が歪む。
同時に、ブリッジ内に割れんばかりの歓声が満ちた。
「スゲエッ!ナリス中尉やってくれるぜ!」
「エースってやつじゃねえのか、14機撃墜だって?!」
「こんな活躍見たの……ゾラ隊長どの以来じゃねえか」
「ああ、アレは凄かったぜ……集中砲火で火の玉になったかと思えやぁ……」
「ちょっとまって!」
思わず口が出てしまう。
「着任時のアレはほぼ全部マクロ……オートなのよ、誰だって出来る。ナリス中尉のマニュアルマニューバ、マニュアルエイムのガンコントロールはそのまま彼女の実力よ。一緒にしたらナリスが可愛そうだって!」
ざわめきが懐疑的な色を催し始める。
「誰でもぉ?……だってよ」
「するってぇとアレかい?おいらにもできるっつーコトかい?」
江戸っ子がいるのか……
「ゾラ戦隊長!俺らにも出来るんですか?」
「……座学が要るかな」
後だしじゃんけん、というか大地の時代の航空戦闘術から幾世代にも渡って研がれ続けてきた条件分岐のコード的思考を言葉と実地で焼き付けなければ到底実戦では使い物にならない。
「座学……お勉強ですかい?」
「座って強くなんなら誰も死にませんやw」
軽侮の笑いであーしの差し出した手は払われたのであった。
めでたしめでたし☆
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