君と歩む未来
キラキラと輝く星空の下、恭介は姫名と2人きり。
いつか来た丘の上で、ブランコを漕いでいた。
「ここに来るのも久しぶりだね。4年ぶりかな?」
「うん。姫名ももうすぐ卒業だな」
「ほんと、あっという間だね。恭介は、仕事はどう?」
「だいぶ慣れてきたと思う。楽しいよ」
「よかった」
会話が途切れて恭介はズボンのポケットに手を入れる。
チラリと隣を見ると姫名は星空を見ていた。
その横顔に見惚れながら、立ち上がり彼女の前に跪く。
(ガラじゃないんだけど…)
スッと姫名の手を取ると、弾かれたようにこちらを向いた。
驚いている彼女の右手に指輪をはめる。
「……俺と、結婚してくれませんか…?」
「………はいっ!喜んで!」
指輪を包み込み、姫名は涙を浮かべて笑う。
そのまま、抱きついてきた。
恭介も抱きしめ返しながら、込み上げてくる涙を堪えていた。
「……はぁ」
片付けを終えたマナは、ベッドに倒れ込む。
スマホを見れば、18時と表示されていた。
(まさか、こんなことになるなんて)
むくりと起き上がり、階段を降りていく。
キッチンに入った時、すぐそばに置いていたスマホが震え出した。
「もしもし?」
「マナ!?今からそっち帰っても大丈夫!?」
「今から?ご飯作るとこだけど…何かあったの?」
「ちょっとね、報告があるの!!すぐ行くね!」
走っているのか息を切らしながら姫名が電話を切った。
報告、とはなんだろうか。
(もしかして、恭介くんのことかな)
冷蔵庫を開いて、お肉を取り出した。
「よし!ごちそう作るか」
「お待たせ〜!!」
バンッとリビングのドアが開いて、姫名が飛び込んできた。
「おかえり。今日はお母さんたちいないから、ゆっくりしてね」
「うん!」
走ってきたらしく、頰が赤くなっていた。
テーブルについた姫名と入れ替わりに、マナはキッチンへ入る。
暖かいお茶を淹れたカップを手に、テーブルへ戻ると姫名の手元に光るものが見えた。
「お茶入れてるからね」
「ありがとう。……安心するなぁ」
ホッとひと息つく姫名に、ウズウズしてしまう。
いっそ、こちらから聞いてしまおうか。
口を開いた時、姫名がパッとマナを見た。
「そう!報告っていうのは……これだよ」
姫名が右手を差し出してくる。
その薬指には、指輪が光っていた。
「婚約、おめでとう〜!!そうじゃないかと思ってたのよ。ごちそうで正解かだったかな」
恥ずかしそうに笑う姫名に料理を盛りつけた皿を渡す。
「今夜はお祝いだね!ほら、どうぞ!」
「ありがとう!」
2人で話をしながら夕飯を食べる。
こんなに晴れやかな姫名の笑顔を見たのはいつぶりだろう。
中学生の頃、恭介に話しかけられずに落ち込んでいた彼女はもういない。
それがたまらなく嬉しかった。
2人で食卓を囲みながら、沢山話をした。
ひとしきり盛り上がった後、姫名がためらい気味に口を開いた。
「ひかりちゃんとは、どうなったの?」
「……結婚はできないけど、同棲することになったよ。今度、引っ越すんだ」
「そうなのね!よかった!……お互いに、好きな人といられてよかったね」
「うん!」
「お互いに幸せになろうね」
「うん!」
これからの、輝く未来に乾杯ー。
顔を見合わせて笑った。
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