採掘
小休憩が終わったので再びログイン。
マックス達に挨拶を済ませて、ワーム便の発着所へ向かう。到着するとミミッチ達はいなかった。特にやることもないのでベンチに座って待つとしよう。
「ヴァン!」
マックスが足元でお座りしている。遊んでほしいのか?
アイテムボックスからスライムボールを取り出して向こうの壁まで投げる。マックスは喜んで取りに行った。ベラは俺の膝の上でマックスの様子を見ている。たまにはお前も
遊んでいるとトンネルの中から光が見えてきた。それに気づいたマックスが慌てて戻ってきて、俺の足に抱き着いた。まだミミッチに慣れてないみたいだな。
ミミッチが到着すると運転手が降りてきた。
見ただけでは前回会った運転手と同じなのか分からなかったが、話してみるとすぐに別人だと分かった。
「あ!君がヨルガノ君?」
「そうだ」
「聞いてるよ~。よろしくね!」
今日の運転手は気さくな性格なみたいだな。
俺はアイテムボックスから野菜の入った箱を取り出す。
「よろしくな。運転手、運賃の野菜はどれがいい?」
「わぁ~!選んでいいの?」
「自由に選んでいいぞ。ミミッチにもあげていいか?」
「ミミッチに?別に良いけど」
俺はキュルア(見た目がキャベツ)の野菜を箱ごと持ってミミッチのそばにやってきた。
「ミミッチ!食べるか?」
ミミッチは何も言わずに口を開けた。食べるってことね。
キュルアを10個ほど口の中へ投げ入れた。
「少なくて悪いな」
「気にするなだって!珍しいな~。ミミッチが冒険者に話すなんて。僕はこれね!」
いつの間にか横にいた運転手が通訳してくれた。俺には何も聞こえなかったけど…。
運転手が選択した野菜は二トン。ニンジンのような野菜。それを二本渡した。
「おいし~!こんな良い品質の野菜は久しぶりだよ!じゃあミミッチに乗ってね!すぐに出発だよ!」
運転手と別れてすぐに俺達もミミッチへ乗り込んだ。
マックスをミミッチに乗せるのが大変だった。どうせすぐに着くのにな。
白鉄山に到着したので運転手達と別れる。地表に出ると周りには誰もいない。
ワーム便の出入口になる切り株の近くで戦闘をするのもどうかと思ったので、俺達はレイアに『入るな』と言われた鉱山の入口前まで移動した。ここは広場みたいになっていて戦闘するにはちょうどいい。
さて、何が出るかな。
今日の狩りは軽くだからね。できればモーロックが良いな~。
アイテムボックスから「呼びつけの笛」を取り出して吹く。すると怒ったキルッキが上空から攻撃を仕掛けてきた。
こいつだけは来て欲しくなかった。俺はマックスへ指示を出す。
「マックス!雷魔法!」
「ヴ~、ヴァン!」
マックスの魔法がキルッキに直撃して地面に落ちてきた。前回と同様に俺が止めを刺した。
「あと2回キルッキが出てきたら狩りは中止だ。その後は採掘をするぞ」
「呼びつけの笛」でモンスターを呼び続ける。
出てきたモンスターはモーロック7体。キルッキ2体。そして…。
「これは狩って良いのか?」
俺の目の前で震えている野球ボールくらいの丸い岩。おそらく分類は岩石系、いわゆるゴーレムとかの部類になると思うんだが…。
怒って俺に突っ込んて来たのだが返り討ちにあったわけだ。いつもなら反撃してくるのはずなのにそのままその場で動かなくなってしまった。終いには震えだす始末。
こうなってしまうと気持ち的に狩りが難しくなるんだよ。仕方ないな。
「ほら行け。もういいから」
俺がそう言うと丸い岩は何処かへ消えて行った。やれやれ。もう2度と出てくるなよ。
マックスのMPが切れたため狩りは中止になった。その代わりにこれからはつるはしを使った採掘が始まる。
「マックス、ベラ。俺が採掘をしている間、周囲を警戒していてくれ」
「ヴァン!」
「コ~」
どれにしようかな。俺はつるはしを持って粉砕する岩を選択する。たくさんあって迷うな。
「う~ん」
「ヴァン?」
マックスが俺を見て不思議そうにしている。俺が何しているのか分かってないもんな。あ~、そうだ!
「マックス。お前が気になる岩がないか?」
「ヴァン?」
「これだ」
俺は近くにあった岩を触る。これで伝わるか?
マックスにはスキル『慧眼』がある。俺に見えないものが見えてるはずだ。
マックスは俺と岩を交互に見て少し考えた後、そのまま俺にじゃれついてきた。
うん、伝わってないな!仕方ない。俺が適当に選ぶか。
俺が付近にある岩を見ているとベラがマックスと何か話している。
君達、周囲の警戒は?
「コッ!コ~」
「ヴァン?ヴァン、ヴ~」
どうやらベラはマックスに俺が言ったことを通訳してくれているようだ。ベラはかしこいから俺の言葉が分かってるもんな。ありがとうベラ。
通訳が終わるとマックスが石を探し始めた…。と思ったら一直線に1つの岩の場所の下へ移動しておすわりをする。
俺はベラを抱き上げてマックスがいる所へ駆け足で近づいて話しかけた。
「これが気になるのか?」
「ヴァン!」
バランスボールのような岩だ。近くには同じような岩がたくさん転がっているのにこれを選んだという事は何かあるんだろう。
ベラを地面を降ろすとマックスと一緒に足で岩をぺしぺし叩いている。
「マックス、ベラ。離れていろ。危ないぞ」
「ヴァン!」
「コッ~」
周囲の警戒…。もういいや。 どうせモンスターは出ないでしょ。
俺は岩の前に立ってつるはしを大きくを振りかぶった。そのまま振り下ろすと乾いた音が響いた。当たり前だが一度では砕くことが出来ないので何度もつるはしを振り下ろす。
カァン!カァン!カァン!
やっていると音ゲーみたいで楽しくなってきた。
カァン!コン!カァン!
上手く振り下ろせないと今のような音が出る。これは俺が採掘のスキルを持ってないからか?でも運が良ければ今日で採掘のスキルが手に入るかも。
何度もつるはしを振り下ろすが岩は割れない。
次はスキルを使ってみようか。
まずは『叩きつけ』
ガン!っと鈍い音が響く。だが岩は割れない。普通に叩くよりかは威力があるって感じか。
続いて『フルスイング』
打点が低いため今まで叩いていた場所と違う場所になってしまうが仕方ない。
スキルを使って岩を叩く。
カァン!と音がした瞬間、手が痺れてつるはしを地面に落としてしまった。つるはしって横方向の力に弱かったんだな。知らなかった。
地道に砕くしかないな。俺はスキルを使わずにつるはしをふるい続けた。
黙々と作業をしているとマックスとベラは一緒になって寝ていた。
分かってる。暇だよな…。でも警戒は?。
淡々とつるはしを振り下ろしていると飽きるので『叩きつけ』を混ぜながら作業を続ける。これでスキルのレベルが上がっていると嬉しい。MPがある限り続けてみよう。
休憩を取りながらゲーム内で3時間採掘を続けた。
結果としてスキルを獲得することはなかったが叩いていた岩は粉砕できた。
叩いていた岩は真っ二つになるのではなくバラバラになった。これ、おかしくないか?こういう仕様?
いや俺が知らないだけで普通はこうなるのかも。でも綺麗に真っ二つになると思ってたのに…。まぁ良いか。
壊れた瞬間は気持ち良かったし。それに達成感がすごい!リアルでもできないかな。
「ヴァン!ヴァンヴァン!」
マックスが俺が壊した岩の欠片の1つを足で叩いている。
そこら辺は危ないぞ!尖った岩のかけらもあるんだから、こっちに来なさい!
「ヴ!」
マックスが足で叩いていた岩の欠片を口で咥えて俺の所まで持ってきた。俺はその場でしゃがんで受け取る。
その欠片は手に収まるサイズで見た目は岩にしか見えない。だがほんのり温かい。 まさかと思い、そのかけらを鑑定した。
アイテム名:???のたまご
説明:???が産まれるたまご。孵化させて仲間にしよう!
思った通り。やっぱり卵か~。まさか岩の中から出てくるなんて。どうやって産んだんだよ、これ。
でもどうしよう。次にテイムするのは馬系が良いんだけどな。
「コッ!!!コッツ、コッ!コッ!」
「ベラ、どうした」
ベラが俺を中心にして走り回っている。目が回らないかそれ。
「ベラ。何が言いたい」
「コ~。コッ、コッ!コッツ!」
誰か通訳をお願いします!全く理解できません!
「ん~」
「コ~」
ベラが伝わらなくて悲しんでいる。ちょっと待って、頑張るから!
「コッ!ココッ!」
卵を持っている手を見ながらベラが鳴く。これが欲しいのか?
「これが欲しいのか?」
「コッ!!」
ベラの前で卵をちらつかせると返事をした。何をしたいのか分からないが俺はベラの前に卵を置いた。するとベラが卵の上に座る。
なるほど。温めたかったのね。
「コココ!コッ!?コッツ!ココ~」
まだ言いたいことがあるそうだ。いつもは静かなのに。今日はどうしたのよ。
「ヴ!…。ヴァン!」
マックスが四角い岩をどこからか持ってきた。その上にベラが卵を置いて座る。
卵を温めるのに座布団が欲しいってこと?
座布団?…。あっ!そういえば斎藤さんから貰ったアイテムがあった。
アイテムボックスから取り出して鑑定する。
アイテム名:ぬくぬくざぶとん
説明:この上にモンスターの卵を置くと孵化する時間が短縮される。
ざぶとんを取り出すとベラがそれを凝視している。俺はベラに問いかけた。
「これが欲しいのか?」
「コッ!!ココ!!」
やっと正解!ここまでしてもらわないと気づけないのが情けない。
俺はベラの横に『ぬくぬくざぶとん』を置いた。するとベラはその上に卵を置いて自分も鎮座した。
「ベラ。その卵を孵したいのか?」
「コッ!」
何でそんなにやる気なの?いまさら卵を取り上げるわけにもいかないし…。
3体目のモンスターはその卵に決まりか。
いや待てよ?もしかしたら馬が産まれるかもしれない!
…。現実を見るか。何が産まれるのかな~。
「ベラ。ずっとそのままでいるつもりか?」
「コッ?…。コ~」
「移動する時に温めるのは無理だろ?」
「コ~」
「お前も理解しているのか。どうするべきか…」
こういう時は誰かに相談するしかないんだが…。
あの人に連絡するのは嫌だな~。でも俺の知り合いでこういう事を知ってそうなのはあの人だけなんだよな。
あの人に連絡するかどうか考えていると俺はふと思った。いや忘れていたんだ。
俺の憧れるヨルガノだったらこういう時どうするのか。そんな事、決まっている。
「待ってろベラ」
「コッ?」
俺はメニュー画面を開いてフレンドを選択した。その中に1人にフレンドコールをかける。本来は緊急時以外に自分からフレンドコールはしないと心に決めている。
だが今は緊急時だ。出てくれるかな?
≪はい、斎藤です。どうしたの?ヨルガノ君。君から連絡してくるなんて≫
≪私も苦渋の決断でした≫
≪そんなに嫌だったの?≫
本気で受け取らないでくださいよ。冗談じゃないですか。
卵について質問するとしよう。
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