14.火に入るなら、熱いことを理解なさい

 熱い、身体が燃えている。

 肌が溶けて、焦げて、肺まで熱に溶かされている。

 慌てて自分の部屋から、肌は元通りだった。

 部屋の中にあるのは、ただのディスプレイの光だ。


 でも、確かに苦しかった。

 そうだから、あの炎は確かにあったはずだ。


 確かめるべく部屋に入ると、熱いどころか窓から伝わる冷気が肌を刺した。

 身体が震え思わず二の腕をさする。

 椅子に座ると、ギィと嫌な音が鳴る。

 買い換えよう、買い換えようと何度行っただろうか。

 足を組んで、ただしたとは無縁の大勢で画面を覗き込む。


 画面の奥には何もない。

 あるのはただの活字で、光の集合体だ。

 彩豊かなアイコンに、うんざりするほどチープな広告。

 ただ、惰性を貪りたいだけだったはずなのに。

 何かが、引っかかってしまったのだろう。

 部屋の空気が熱を冷ます暇もなく、炎に手を伸ばしたのだろう。

 光に集まる虫のように、飛んで火にいる何とやら。

 使い方は当然異なるが、俯瞰して見れば滑稽なものだ。


 僕は虫ではないはずなのに、虫と同じくらいしか脳がなかったらしい。

 非常に残念だ。

 知ってはいたけど。


 そうやってまた、活字に時間を溶かしていった。

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