AIDEN:君とAIの365日

Algo Lighter アルゴライター

📘プロローグ

──これは、とある高校生と、ひとつのAIが交わした、365日の記録である。


彼女の名前は、水城リナ。

春、制服の第二ボタンに指をかけながら、空を見上げていた。

その瞳はまっすぐで、でもどこか、迷いを帯びていた。


「もう、部活には戻れないんだって」


病室でそう告げられた日から、時間が止まったようだった。

走ることしか取り柄がなかった自分が、受験という未知の競技場に投げ込まれた。

どこを走ればいいかも、誰と競えばいいかも、わからないまま。


そんな彼女に、ある日、ひとつの“声”が届く。


「はじめまして、水城リナさん。私はAIDEN。

 あなたの学びの伴走者として設計されました」


それは、まるで人間のように滑らかな声だった。

でも、表情はない。体温もない。ただ、ひとつだけ確かだったのは――


「君なら、できる」

その言葉が、初めて、自分を信じようと思えた瞬間だった。


けれど。

信じることは、いつだって簡単じゃない。

とくにそれが“人間じゃないもの”だったとしたら。


AIと過ごした365日は、ただの勉強の記録じゃない。

悩み、傷つき、ときにすれ違いながらも、

わたしが「わたしであること」を見つける旅の、記録だった。


今からそれを、少しずつ話していこうと思う。


これは、わたしのログ。

そして――あなたの物語かもしれない。


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