29話
そして自室へ着き執事長と別れた。部屋の中に入り、ふらふらとベッドへ向かって行き力なくベッドに倒れ込み「はぁぁぁぁ」と大きなため息をした。しばらく経ち、起き上がろうとしても体が動いてくれなかった。久しぶりに人と関わろうとしたため疲れたのだろう。
(ここまで、人のために頑張ろうと思ったのは久しぶりだわ)
と内心で悪態を付きながら使用人達の教育方法について思考を巡らせていたのだった。
―――――――――――――――――――――
一方、噂と全然違う令嬢と会話をして別れた後はは噂と違う令嬢について考えていた。その令嬢が来て数日間は令嬢も噂通りの令嬢のように見えていた。だが、自分だけはその令嬢の本性に気づいた。いや、気づかされたと言った方が適切だろう。噂の悪役令嬢がどんな人間なのかを試そうと事前に上司であり幼馴染である国王のカイヤから許可を貰い、宣言通りカイヤをナイフで襲おうとした。だが、その令嬢はひと睨み(殺気)で自分の動きを止めてみせたのだ。その後から自分は令嬢のことをさり気なく探っていた。その結果、令嬢は何らかの理由で人と関わることを避けていたという考えに辿り着いた。だが昨日、明らかに令嬢…タルザナの心を変えさせた。そのきっかけは、とある新人メイドが教育係のメイドに虐められていたことだろうとファトールは察していた。当の本人であるファトールは、虐めをしていた教育係のメイドにクビを宣言をし代わりの教育係を手配していた。そのため、何故タルザナが接しやすくなったのか分からないのだ。だが、人と関わろうとしなかったタルザナが何故人と関わろうとするようになったのかが気になるがそれを口に出すことは出来ないのが使用人の辛いところである。
「はぁ、あいつはとんでもないご令嬢を連れてきたな」
と考えながら身を翻し、主君であり…幼馴染のカイヤの部屋へと向かう。そろそろ、彼が目を覚ます時間がだからだ。この際、彼女のこともまとめて聞いてしまおう…その返事が拳だとしても。
「陛下、私です。ファトールです」
「……通れ」
「御意」
と言いながら、主君の部屋に入る。そしてドアを完全に閉め、ファトールは「ふぅ」と一息を付き凄まじい速度で幼馴染の元に近づいた。
「なあなあ、カイヤ!!」
「……何?」
「タルザナ嬢って最初近寄りがたかったじゃん?でも、何か急に優しくなったんだけど!!もしかしてあの新人のメイドの虐めの件で何かあったわけ!?」
「うっさい、説明してやるから落ち着け。耳がキンキンして仕方がない」
カイヤは気怠そうにファトールの顔面に枕を命中させた。これがカイヤとファトールの二人きりの時の会話であり、互いの扱い方だ。表向きでは、しっかりと主従関係だが二人の時は幼馴染としての二人に戻る。そんな理想的な関係を築いている。そんなことができるのは互いの信頼からなるものだろう。そしてファトールは枕を片手に持ちもう片方で枕にぶつかった自分の顔を撫でる。それを無視しタルザナについて話した。話しとしてはこうである。皇太子にひどい扱いを受け人間不信になり、人と関わりたがらなかったが自分と同じようにひどい扱いを受けていたメイドを見て親近感が湧き使用人達の教育をかって出た…と。それは半分本当で半分が嘘である。タルザナは決して皇太子にひどい扱いを受けていたから人間不信になっていないが、そう言った方がタルザナに配慮してのことだろう。それを聞いたファトールは納得し、タルザナを完全に信用するのはまた別の話である。
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